2021 Fiscal Year Research-status Report
19世紀アメリカ文学とテクノロジーの交錯にみるサイエンス・フィクションの原風景
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17K02577
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
中村 善雄 京都女子大学, 文学部, 准教授 (00361931)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヘンリー・ジェイムズ / 降霊術 / スピリチュアリズム / 自動書記 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に日本ナサニエル・ホーソーン協会関西支部にて開催されたシンポジウム「英米文学における″夫婦″のかたち―私的空間の男女」での発表を基に、本年度はその論文原稿の準備を行なった。その中で、死者の声を生の世界の言葉へと変換する霊媒と音声言語を文字言語へと変換するタイプライターとの親和性について検討を深めた。また死者の言葉を書き留めようとする自動書記の役割とタイプライターの関係性を盛り込み、四次元的世界をスピリチュアリズムの観点から考察した。その研究成果を「親密圏のジェイムズとボサンケット―タイプライターのエコノミーと書くことへの欲望」(仮題)と題した論文に仕立て、2022年度中に共著本として成果発表する予定にしている。 その他、共著本2冊が上梓された。1冊目は2022年2月出版の『多次元のトピカー英米の言語と文化』所収の拙論「「ほんもの」にみるジェイムズの自己言及性とイラストレーションの変遷」である。ロラン・バルトの写真論やジェイムズの執筆当時の挿絵を巡る状況を踏まえ、従来寓話として軽視されていた短編「ほんもの」のオルタナティヴな解釈の可能性を追求した。また3月出版の『現代アメリカ社会のレイシズム』にて拙論「ジューイッシュ・クランズマンの不可視性と人種的両義性」を発表した。研究発表では、欧米言語文化学会関西支部の「人種・民族」のフォーラムにて「『自由を求めた千マイルの逃走』と人種/階級/ジェンダーへの問い」と題した発表を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、スピリチュアリズムとタイプライターとの関係、つまり、死者の声を生の世界の言葉へと変換する霊媒と音声言語を文字言語へと変換するメディアの親和性について考察し、スピリチュアリズムの視点から四次元的世界についての研究を進めた。その成果を盛り込んだ論考を「親密圏のジェイムズとボサンケット―タイプライターのエコノミーと書くことへの欲望」(仮題)と題して、2022年度中に発表する準備は整った。一方で、本研究課題の柱である四次元思想と空間の相対化を踏まえたジェイムズ作品の解釈については資料収集と推敲を重ねている段階で、論文として発表することが叶わなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に執筆を進めた「親密圏のジェイムズとボサンケット」(仮題)の修正と校正を行い、共著本として出版することが第一の目標である。次に、当該課題の主題の一つである、ジェイムズ作品にみるパラレルワールドと四次元思想の関係に関する研究を進め、空間の相対化をキーコンセプトとして、ジェイムズ作品のSF的側面に着目し、成果発表する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ感染状況が好転せず、学会はすべてZOOMによるオンライン形式で開催され、学会出張が出来ず、それに伴って旅費に割り当てられた予算が執行できなかったことが主因として挙げられる。次年度使用額の予算は主として当該研究を遂行するための図書費並びに出張費に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)