2017 Fiscal Year Research-status Report
The Rhetoric of Post-Disaster in Contemporary American Literature
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17K02579
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Research Institution | Nishikyushu University |
Principal Investigator |
渡邉 真理子 西九州大学, 健康福祉学部, 准教授 (70389394)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 核表象 / 現代アメリカ小説 / ヴェトナム / 災害文学 / 戦争文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
「戦後」表象の一環として、29年度はアメリカ文学サバイバル研究会月例会での定期的な研究発表の他、日本英文学会第70回九州支部大会における招待発表「ホームへの帰還――Tim O'Brienのヴェトナム」で、オブライエンのヴェトナム戦争小説すべてに共通して認められる「ホーム」という概念の諸層についてまとめることができた。この発表原稿は今後著書として発表予定であるオブライエン論における「戦後」表象の一部となる見込みである。また、朝鮮戦争を主題とした小説における「戦後」の描かれ方をヴェトナム戦争小説と比較検討するためにトニ・モリスン作『ホーム』を精読し、その一部を第66回冷戦読書会で発表した。ポスト9.11分野に関しては、これまでの活動によって得られた知見の一部を『アメリカ文学研究』第54号に掲載した書評(上岡伸雄著『テロと文学―9.11後のアメリカと世界』)の中に反映した。 ポスト・ディザスター表象における災害ナラティヴの領域では、『アメリカ文化事典』(丸善出版)に寄せた項目「ロードナラティブ」のなかでコーマック・マッカーシー作『ザ・ロード』を取り上げ、21世紀というグローバリゼーションの時代における災害のアメリカ的文化表象について論じた。さらに、30年度秋に刊行予定の共著『現代アメリカ文学における「保守」の諸層』に論文「戯れるアトムとイヴ――南部原発小説としての『アトミック・ロマンス』」が掲載されることが確定している。これまで戦争や自然環境破壊の面から描かれることが多かったポスト・アポカリプスの主題に「労働」の側面をプラスしたという点から、この論文は3.11以後の現在の日本が抱える問題と共通項をもった<原発と労働>という着眼点をその特徴としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
口頭発表および活字業績二点ということで、一定の成果を出すことは出来た。平成29年度中に脱稿予定だったティム・オブライエン論の準備が進まず30年秋に完成見通しとなるというスケジュール上の遅れがあるが、これに関しては定期的にアメリカ文学サバイバル研究会を開催して準備を行う体制を整えているため、遅れを取り戻すことは可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題のための研究会(アメリカ文学サバイバル研究会)を定期的に開催し、同分野の研究者たちと意見交換を重ねることで、課題遂行に向けて努力するつもりである。
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Causes of Carryover |
課題の進行状況からアメリカへの資料収集と書籍購入のための出張を延期したため。30年度以降に計画的に使用するつもりである。
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Research Products
(10 results)