2021 Fiscal Year Research-status Report
The Rhetoric of Post-Disaster in Contemporary American Literature
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17K02579
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
渡邉 真理子 専修大学, 文学部, 准教授 (70389394)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ディザスター / 冷戦期 / 核文学 / ポスト9.11小説 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の大きな成果としては、二本の研究論文を発表できたことである。 一つは、Ecocriticism Review誌に掲載した“Where Seductive Fungi Spread: Contextualizing Cold War Japan in Ishiro Honda's Matango and William Hope Hodgson's “The Voice in the Night””である。これは、2020年度エコクリティシズム研究学会オンラインワークショップ"Weirding Ecology"において口頭発表した原稿に加筆修正を施した論考である。核戦争・原子力エネルギ・汚染と感染という視点から日本とイギリスとアメリカの三つの文化を比較することで、戦後の高度経済成長期の日本で誕生した映画『マタンゴ』のキノコ表象に、(1)アメリカにおけるスペクタクルとしての核実験(2)60年代日本における消費と欲望(3)グローバルで文化的な感染ナラティブの諸相、を読み取ることができた。 もう一本は巽孝之監修『脱領域・脱構築・脱半球――二一世紀人文学のために』に寄稿した「ツインタワーの幻影――ジェイ・マキナニー『グッド・ライフ』における「対」のモチーフ」である。この論文の執筆にあたっては、2019年に関西大学の研究会「世界的内戦時代の英文学研究」で行った招待発表「ツインタワーから南北戦争へ―Jay McInerneyの_The Good Life_における分断のモチーフ」の原稿を大幅に加筆するとともに修正を行った。これにより、モダニズム期からのニューヨーク小説の系譜と米国同時多発テロ事件を取り上げたポスト9.11小説を接続しつつ、マキナニー作品にみられるアメリカの南北表象とツインタワーの「双子」のイメジャリーを暴力という視点から捉え直すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
所属先変更に伴い研究活動の拠点が変わったことと研究協力者の都合が重なり、それまで継続していた研究会を開催することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
遅れているヴェトナム戦争分野のティム・オブライエン研究について、早期に原稿を完成できるように努力する所存である。資料の整理とノートの作成は継続しているので、次年度は後期の小説についての論文を仕上げることができる見込みである。
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Causes of Carryover |
所属機関の変更に伴う居住地変更と継続中の新型コロナウィルスの影響、研究協力者のオンライン環境が整っていないこと等から、福岡で定期的に実施していた研究会を開催することができなかった。加えて研究計画以外の仕事も入ったため、研究遂行のペースが遅れてしまった。研究会については現在、感染状況を考慮しつつ対面再開に向けて調整を行っている。従って、次年度の使用計画としては出張旅費、貸会議室の使用料、読むべき資料の購入に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)