2018 Fiscal Year Research-status Report
Universal Significance of a Novelist from Northern Ireland, George A. Birmingham
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17K02580
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Research Institution | Beppu University Junior College |
Principal Investigator |
八幡 雅彦 別府大学短期大学部, その他部局等, 教授 (50166568)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 北アイルランド小説 / ジョージ・A・バーミンガム / ナショナリズムとユニオニズム / ユーモア / ニール・ヘガーティ / ディアドレ・マドゥン / 家族 / 普遍性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ジョージ・A・バーミンガムを中心に北アイルランド小説の研究を行った。8月にはダブリン大学トリニティ校古文書研究図書館において「J.O.ハネイ文書」の研究に当たった。バーミンガムがなぜアイルランドがイギリスから独立することを主張したのか。それは政治的理由というよりも、イギリス本国から税金を搾取されるのを忌避すべきだという経済的理由であることが一部理解できた。次年度はさらに精読し、今後のバーミンガム研究に役立てる予定である。また土地同盟の主導者マイケル・ダヴィットがバーミンガムのHyacinth(1906)を称賛する手紙にも接し、バーミンガムの価値を再認識した。 ダブリンを訪れた際に北アイルランドの現代小説家ニール・ヘガーティに会い、話題を呼んだ彼のデビュー作Inch Levels(2016)について論じあった。彼と実際に話しをすることによって「家族」をテーマにした普遍的な訴えかけを持った作品であることが理解できた。新作が2019年11月に出版されることも知った。 10月には北アイルランドの女性小説家ディアドレ・マドゥンが国際アイルランド文学協会日本支部大会に招かれ来日した。その際に、彼女のMolly Fox's Birthday(2008)とTime Present, Time Past(2013)を取り上げて口頭研究発表を行い、マドゥン自身にも聴いてもらえた。発表内容は、メタファーとシンボルが作品のテーマを際立たせるためにどのような役割を果たしているかということだった。そしてこの2作品が、家族をテーマとし、どの家族も問題を抱えているが家族は団結してそれらの問題を解決して生き延びてゆく義務があることを訴えている、そしてそれは勇気を与えてくれるメッセージだと結論付けた。この発表は、『別府大学短期大学部紀要』第38号において、他の2作品も併せて論ずる形で論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
将来的に、研究成果の発表として、(1)バーミンガムの短篇小説集翻訳、(2)バーミンガムの研究書(英語)、(3)北アイルランド小説全般に関する研究書(日本語)の出版を意図している。 (1)に関しては、バーミンガムの神髄を最も表していると思われる7篇を翻訳する。そのうちの2篇「発車オーライ」"Starting the Train"、「陳情団」"The Deputation" に関してはアイルランド人英語講師に曖昧な部分を尋ね明らかにすることにより原稿をほぼ完成させた。残りの5篇は2019年度中に原稿を完成させ、2020年度の出版を目指している。 (2)に関しては、バーミンガムの読むべき作品はほぼ読み終えた。これからは、過去20年以上にわたって発表してきたバーミンガム論文に修正を加える。そしてホームページで紹介し続けてきたバーミンガムの作品についても追加で論じる。また今後ともダブリン大学トリニティ校古文書研究図書館の「J.O.ハネイ文書」の研究に当たり、バーミンガムの作品の背景理解に努める。このようにして4,5年後の出版への道筋は立っている。 (3)に関しては、2017年度のマン・ブッカー賞を獲得したアナ・バーンズをはじめ、現在、北アイルランドは世界中の読者の心に訴えかける作品を書く小説家たちを輩出している。テーマも、「家族」「恋愛」「人生」その他多岐にわたっており、北アイルランド紛争がどのようにそれらに影響しているかを探る予定である。取り上げる作家には事欠かない。今後とも学会口頭発表、論文発表を続け、上述のバーミンガムの研究書を出版した後の出版を目指している。 当初予期していないことが起こるとすれば、研究以外の業務の多忙さが研究の進捗を阻害することである。例えばホームページのアップデートが2019年度にずれ込んだ。これに関しては長期休暇、指定休を有効に使って乗り切る。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、本研究課題の成果発表として(1)バーミンガムの短篇小説集の翻訳(2)バーミンガムに関する研究書(英語)、(3)北アイルランド小説に関する研究書(日本語)の出版を意図している。 (1)に関しては、翻訳出版を予定している7篇の作品に関しては、すでに『別府大学短期大学部紀要』『大分県アイルランド研究協会会報』等に発表したもので、今後はアイルランド人英語講師に曖昧な部分を尋ね完璧にした後に出版社に原稿を呈示する。 (2)に関しては、ダブリン大学トリニティ校古文書研究図書館所蔵の「J.O.ハネイ文書」の研究に当たり、バーミンガムの手紙、バーミンガム関連の新聞雑誌記事を精読し作品の背景の理解に努める。バーミンガムはシェイクスピア、ディケンズ、ベーコンその他の数多くの古典作家に精通しており、彼らの影響がバーミンガムの作品のうちに察せられる。さらにアーサー・グリフィス、ダグラス・ハイド、ホレイス・プランケット等アイルランドの歴史上の人物と懇意であった。バーミンガムの古典作家達への精通、歴史上の人物との交友がバーミンガムの作品の価値をどのように高めているかを解明する。 (3)に関しては、北アイルランドは、現在、世界中の読者の心に訴える作品を書く小説家を輩出している。グレン・パタソン、ディアドレ・マドゥン、ニール・ヘガーティ、アナ・バーンズなどがその例である。彼らの作品を読むと同時に、彼らと実際に会って彼らの作品を論じることにより、さらに理解を深める。最近読んだ C.Magennis, "Bubbles of joy: moments of pleasure in recent Northern Irish culture" が今後の研究を推進してゆく上で大きなヒントとなった。彼女は北アイルランド小説に描かれた「愛」について論じている。同様の視点から研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
例年、3月にバーミンガムのホームページに新たな研究で明らかになったことを書き加えアップデートを行っているが2018年度は他の業務が忙しく、2019年度におこなうようにしたため。経費として3万円を予定している。
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Remarks |
ジョージ・A・バーミンガムに関する日本語、英語によるホームページで、略歴の他に作品及び内容紹介、研究書、研究論文、研究機関を紹介している。
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