2019 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Representations of the Sixteen Carmelites of Compiegne
Project/Area Number |
17K02582
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
中里 まき子 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (40455754)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フランス革命 / コンピエーニュ・カルメル会 / 受肉のマリー修道女 / 証言 / 喪のエクリチュール / 記憶 / 回想記 / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
フランス革命期の反カトリック政策に抗して信仰を貫いたために、1794年7月、コンピエーニュ・カルメル会の16人の修道女がギロチンにかけられ、殉教した。同会の受肉のマリー修道女は偶然により処刑を免れ、革命期を生き延びた後、1830年代に16修道女の生前の言行や殉教の場面を書き残した。2019年度にはマリー修道女の手記を、革命に関する他の証言テクストも視野に入れつつ検討し、下記の知見を得た。 再建されたサンス・カルメル会修道院に身を寄せていた受肉のマリー修道女が1836年に没した後、その手記が修道院長クレマン・ヴィルクール神父によって発見され、編纂された際、原文に忠実ではない箇所が多分にあった。このような編纂者による介入は、ジロンド派の黒幕と目されて処刑されたロラン夫人の獄中記や、ヴァンデ戦争を記録したラ・ロシュジャクラン侯爵夫人の手記の編纂・出版においても見られることである。そして、こうした革命の証言テクストが編纂・出版された状況は、19世紀以降のフランス社会において革命の記憶が果たした役割を映し出すものである。この認識のもと、ロラン夫人獄中記の複数の版を検討したところ、19世紀に広く読まれた版では、革命期の動乱を歴史的事件として記録した「革命史覚書」以上に、刑死へと至る自身の生涯を幼年期から回顧した「私的回想」に重点をおいて編纂されていることが明らかになった。 証言テクストの検討に加えて、革命の記憶の継承のために作られた記念建造物や、当時から保存されてきた遺構の現地調査を計画していたが、フランス出張は次年度に延期となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フランス革命の記憶の継承のために作られた記念建造物や、当時から保存されてきた遺構の現地調査を3月に予定していたが、次年度に延期となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
カルメル会の16修道女の殉教を含む革命の記憶が、現在までどのように継承されてきたかを検討する。記憶の継承のために、証言テクストや文学作品だけでなく、歴史的遺構、記念建造物、資料館等が担う役割にも着目する。
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Causes of Carryover |
新型肺炎の世界的な流行を踏まえ、所属大学から海外渡航をできる限り控えるよう要請があり、3月に予定していたフランス出張を延期することになった。次年度に出張旅費400,400円を使用して、フランス革命の記憶の継承のために作られた記念建造物や、当時から保存されてきた遺構の現地調査を実施する。
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