2020 Fiscal Year Annual Research Report
The transmission and development of the principles of verse composition in Arnoul Greban's Mystere de la Passion
Project/Area Number |
17K02583
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒岩 卓 東北大学, 文学研究科, 准教授 (70569904)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 仏文学 / 文献学 / 演劇学 / 詩作技巧 / 写本学 / 比較文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度にあたり、『受難の聖史劇』(「第一日目」)の現存写本のうち、その読解に比較的に問題が生じにくい写本(A,B,E,F,G,H,K)の転写のチェックを行った。その上で、これらの転写を基として各写本のテクストにおける孤立詩行の有無を確認し、その写本一つ一つの生成にどのような配慮が行われていたかを分析した。その過程で、本作品の伝承において払われていた格別の注意の存在を明らかにすることができた。またそれぞれの写本の位置づけについても考察を深めることができた。 上の結果を考慮にいれつつ、『受難の聖史劇』のモデルとなったユスタシュ・メルカデ作『アラス受難劇』(「第一日目」)の転写との比較を行い、グレバンの作品が先行作品に対して持っていた諸々の違いを確認した。さらに先行作品に比してグレバンの作品が、観客や読者が主題を身近に感じることができるような配慮を行っていたことを示すことができた。また中世の聖書注解などを参照し、『アラス受難劇』と『受難の聖史劇』が聖書や中世神学をどのように採り入れていたのかを、キリスト誕生のシーンを例にとりながら明らかにした。さらに諸写本に加えグレバンの作品を改作した16世紀の複数の印刷本を検討することで、作品成立以降の約百年間に渡ってグレバンによって書かれたテクストが安定的に受容され続けたことを示すことができた。 以上の考察によって、15世紀から16世紀前半までのフランス語による劇作品の歴史において、『受難の聖史劇』が持っていたインパクトを俯瞰的に明らかにすることができた。
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Research Products
(2 results)