2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02588
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
津森 圭一 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (70722908)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プルースト / 庭園 / 田園 / 牧歌 / パリ / 公園 / 風景 / 都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度においては,本研究課題の最終年度となる2021年度中の研究成果の発表に向けて,以下の通り調査を行った。 2020年度前半期は,マルセル・プルーストが作品中で展開する庭園美学が,西洋古典古代から続く牧歌の伝統といかなる関わりを持つかを明らかにすることを目的とした文献精査を進めた。『失われた時を求めて』には,テオクリトスの『牧歌』やウェルギリウスの『牧歌』『農耕詩』への言及が数多く存在する。それらの言及のおのおのについて,その執筆背景を確認する作業を進めた。その成果は,2021年中に研究論文として発表する予定である。 2020年度後半期は,第二帝政期のパリの都市改造計画によって成立した公園緑地を含めた近代的な都市景観が,『失われた時を求めて』でいかに描かれているかを分析する作業を進めた。第二帝政期のセーヌ県知事オスマンの回想録や,造園技師アドルフ・アルファンの著作等を参照しながら,上記人物ならびに建築家ダヴィウーやバルタール等の業績が,プルーストの作品中で持つ意義に着目した。その成果は,2021年度に開催される国際シンポジウム「プルーストと諸芸術」で発表した後に,本シンポジウムの論文集に研究論文の形で発表する予定である。 また,2021年3月には,日本フランス語フランス文学会欧文誌『Littera』に,2019年に完結した『失われた時を求めて』(吉川一義訳,岩波文庫)の書評記事を発表した。その準備の過程で,本研究課題のコーパスである『失われた時を求めて』を概観することができた。 他方,ミシェル・バリドンの『庭園:風景画家,造園家,詩人』を始めとした著作を参考にしながら,西洋の庭園文化史を概説的にまとめる作業を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海外渡航が制限されたことにより,予定していた海外の図書館での資料調査や,庭園や都市公園の実地調査を中止した。オンラインでの資料の閲覧や購入によって補足できた面もあるが,本研究課題は従来の計画通りには進捗しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度中に発表予定の研究論文の発表については「研究実績」の項目で挙げた。同時に,本研究課題の成果を総括する目的で,すでに学術論文の形で発表した研究成果と合わせて,以下のような構成を持つ書籍刊行の準備を進める。 ①牧歌の伝統と20世紀初頭の文学者,②雅歌における囲われた庭の表象と近代フランス文学の関連,③瞑想の場としての中世の庭園と、プルーストの読書論との関連,④フランス近代文学におけるヴェルサイユ庭園の表象,⑤フランスにおける英国風景式庭園の受容と文学における表象,⑥ラスキンの庭園観とプルースト,⑦近代パリの公園政策および都市景観とプルースト,⑧庭園を画題にしたナビ派の画家たちとプルースト
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Causes of Carryover |
当該年度に予定していた研究および資料収集のためのフランスへの渡航ができなかったため,渡航・滞在費用の支出がなく,次年度使用額が生じた。この額は,2021年度中に,主に欧文の関連書籍や研究用の関連機器,消耗品を購入することに充てたい。
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Research Products
(1 results)