2017 Fiscal Year Research-status Report
19世紀後半パリにおける出版物とシャンソンとの影響関係
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17K02589
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
吉田 正明 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (20191611)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シャンソン / シャンソニエ / カフェ・コンセール / 文芸キャバレー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は研究初年度であったため,まずは本研究を遂行する上で必要不可欠な文献資料の収集と整理を行い,日本では入手困難な一次資料の調査にあたっては,2017年9月14日から9月23日まで,フランス国立図書館,アルスナル図書館,パリ市歴史博物館,モンマルトル美術館等で現地調査を実施した。今回は主にジャン・バティスト・クレマンの足跡を辿り,パリ・コミューンの闘士として活躍した後,当時劣悪な環境に置かれていた労働者階級の待遇改善のために彼がアルデンヌ地方で行ったジャーナリストとしての活動の様子や,社会主義の喧伝のために彼が作ったシャンソンについて調査した。とりわけジャン・バティスト・クレマンの有名なシャンソン「さくらんぼの実る頃」の成立過程に関する一次資料の調査を丹念に行い,それらを精査検証した結果,この歌は初版では3番までしか歌詞がなく作者クレマンはパリ・コミューン後に4番の歌詞を書き加えたとする俗説が誤りであることを証明した。 本研究で明らかになった事実とその研究成果を,2017年9月2日(土)に太宰府市で行った「シャンソン研究会15周年特別企画」及び11月11日(土)に信州大学で行った「第30回シャンソン研究会」において発表するとともに,研究誌『シャンソン・フランセーズ研究』第9号(2017年12月発行)にその成果を発表した。 また,2017年5月20日(土)に追手門学院梅田サテライト教室で実施した「第29回シャンソン研究会」においても会員同士で研究テーマについて意見交換し,研究成果を研究書にまとめて出版する可能性を探っていくこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,19世紀中葉から世紀末にかけてパリで隆盛したカフェ・コンセール,文芸キャバレー,労働者サークルという3つの異なる場における,当時の出版物とシャンソンの受容との関係を探ることを目的としている。今年度は「シャ・ノワール」などの文芸キャバレーに出入りしていたシャンソニエの実態を探るとともに,パリ・コミューンの闘士として戦った後,主にアルデンヌ地方において労働者の団結と組合運動を新聞を発行して主導した社会主義的シャンソニエのジャン・バティスト・クレマンの生涯と彼の作品を調査した。入手した文献資料の精査及びパリにおける現地調査の結果,クレマンの作った有名なシャンソンでパリ・コミューンの「血の一週間」の鎮魂歌とみなされてきた「さくらんぼの実る頃」の成立過程を明らかにし,これまで一般に流布していた俗説の誤りを正すことができたことなど,研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,収集した資料を詳細に検討するとともに,引き続き関連資料の発掘・収集を研究計画書に記した調査場所を中心に実施する。併せて,それら新たに入手した文献,諸資料の整理と分析に着手し,本研究に必要となる未収集の文献・資料をさらに補完していく。 そして入手した資料や文献の分析結果をまとめて,シャンソン研究会,あるいは学会や国際シンポジウム等においてその研究成果を発表し,研究者間で議論してさらに研究を深化させていく。 研究2年目は,本研究課題の方向性をより明確にし,その成果の見通しをより鮮明に打ち立てるべき時期にあたるので,研究者間の意見交換を密にし,研究会やシンポジウム等を積極的に開催し,実りある研究成果がもたらされるべく鋭意努力していく。
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Causes of Carryover |
(理由) 当初計画で購入を予定していた文献が入手できなかったため,次年度使用額(21,039円)が生じた。 (使用計画) 平成30年度請求額と合わせて,計画的に使用していく。具体的には,パリへの調査旅行の費用と文献・資料の購入費に主に充てていく。
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Research Products
(3 results)