2018 Fiscal Year Research-status Report
パスカル『パンセ』の人間学――文献学的研究ならびにモンテーニュ思想との比較研究
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17K02594
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山上 浩嗣 大阪大学, 文学研究科, 教授 (40313176)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | パスカル / パンセ / モンテーニュ / エセー / ディドロ / サロン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の主たる方向性は、1)『パンセ』の全断章を草稿資料も用いて精読し、既存の校訂版や日本語訳を批判的に検証することを通じて、申請者独自の『パンセ』新訳を完成させること、2)モンテーニュ『エセー』がパスカル『パンセ』に及ぼした影響について、両者の死生観(信仰論)、認識論、政治論、修辞論、学問・知識論を比較することを通じて、前者から後者への「継承」の側面のみならず「反発」の側面も明らかにし、パスカルの独自な思想形成の過程を精緻にたどること、である。 2018年度は、1)に関して、『パンセ』翻訳を、全体の約3分の1に相当する、「結論」の章まで進めた。今後も、既訳とは異なる解釈の可能性に十分留意しながら継続したい。また、論文「『パンセ』原稿と写本および校訂について:研究の現状」を発表した(『ガリア』58号、大阪大学フランス語フランス文学会)。 2)に関しては、論文「モンテーニュの「気をそらすこと」とパスカルの「気晴らし」」を発表した(『ステラ』37号、九州大学フランス語フランス文学研究会)。また、社会思想史学会編『社会思想史事典』に項目「懐疑主義」を執筆し、モンテーニュとパスカルについて言及した(丸善出版)。以上のほか、「ディドロ『サロン』抄訳(4)」(『大阪大学大学院文学研究科紀要』59巻所収)や、コリンヌ・アトランの論文「読むこと、書くこと、訳すこと」の翻訳(『ガリア』58号所収)など、多様な研究成果が得られた。さらに、私が主宰する「フランス近世の〈知脈〉」という研究会の第4回例会を大阪大学豊中キャンパスにて開催し、私自身を含む5名が研究発表を行い、多数の参加者を集めた。なお、パリでの約1週間の滞在期間中に国立図書館で調査を行った結果、満足のいく新たな知見を獲得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の主たる方向性は、1)申請者独自の『パンセ』新訳を完成させること、2)モンテーニュ『エセー』がパスカル『パンセ』に及ぼした影響を明ら かにすること、のうち、1)はこれまでの2年間で3分の1ほど進められた。また、2)については、論文を一本公刊することができた。ほかにも、研究課題に直接間接に関連する複数の成果が得られた。以上を考えれば、4年計画の本研究課題の2年目としては、研究は順当に進展したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も上記の二つの方向性に即して研究を推進していく。 1)については、2019年度、2020年度の2年間で『パンセ』翻訳を一通り完成させたい。その後、訳文を再検証し、解説文などを執筆する。 2)については、今後2年間で3つの章を執筆し、そのつど学術研究誌に発表する予定である。 また、2019年度、2020年度のいずれかに、パリ大三大学主催の「パスカルおよびポール=ロワイヤル」を主題とするセミナーで研究発表を行う予定である。なお、『大阪大学大学院文学研究科紀要』におけるディドロ『サロン』抄訳の連載は、あと1回継続する予定である(連載最終回の第5回は2020年3月刊行の第60巻に掲載予定)。
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Causes of Carryover |
予定していた国内出張を1回取りやめた。次年度(2019年度)はこの分を出張費用または書籍代に活用したい。
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[Book] 社会思想史事典2019
Author(s)
社会思想史学会(編)
Total Pages
888(山上担当は92-93頁)
Publisher
丸善出版
ISBN
978-4621303412
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