2019 Fiscal Year Research-status Report
パスカル『パンセ』の人間学――文献学的研究ならびにモンテーニュ思想との比較研究
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17K02594
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山上 浩嗣 大阪大学, 文学研究科, 教授 (40313176)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | パスカル / モンテーニュ / ポール=ロワイヤル / パンセ / エセー / ディドロ / サロン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の主たる方向性は、1)申請者独自の『パンセ』新訳を完成させること、2)モンテーニュ『エセー』がパスカル『パンセ』に及ぼした影響を明らかにすること、である。2019年度は、1)に関して、『パンセ』翻訳を、全体の約2分の1に相当する、「XXXIII. Miscellanea」の章まで進めた。また、論文「パスカルにおける「見かけ」の批判」を発表した(『Correspondances 北村卓教授・岩根久教授・和田章男教授退職記念論文集』朝日出版社)。2)に関しては、論文「モンテーニュにおける「見かけ」の批判―パスカルとの対比において」を発表した(『ガリア』59号)。また、パリ第三大学のアラン・カンティヨン教授が主宰する研究会 CEIPPREMにて、"La critique de l'apparence chez Pascal et chez Montaigne" と題する口頭発表を行った。加えて、Takeshi KUBOTA, Montaigne lecteur de la Cite de Dieu d'Augustin (Paris, Honore Champion, 2019) の書評(日仏両語)を『ロンサール研究』XXXII号に寄稿した。以上のほか、「ディドロ『サロン』抄訳(5)」(『大阪大学大学院文学研究科紀要』60巻所収)、『フランス文学小事典 増補版』(共編、朝日出版社)など、多様な研究成果が得られた。さらに、私が主宰する「フランス近世の〈知脈〉」という研究会の第5回例会を大阪大学豊中キャンパスにて開催し、私自身を含む5名が研究発表を行い、多数の参加者を集めた。なお、パリでの約10日間の滞在期間中に上記研究発表のほか、国立図書館で調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の主たる方向性は、1)『パンセ』の全断章を草稿資料も用いて精読し、既存の校訂版や日本語訳を批判的に検証することを通じて、申請者独自の『パ ンセ』新訳を完成させること、2)モンテーニュ『エセー』がパスカル『パンセ』に及ぼした影響について、両者の死生観(信仰論)、認識論、政治論、修辞論、学問・知識論を比較することを通じて、前者から後者への「継承」の側面のみならず「反発」の側面も明らかにし、パスカルの独自な思想形成の過程を精緻にたどること、である。 1)については、これまでの3年間で2分の1ほど進めた。進度は十分とは言えない(電子版『パンセ』の詳細な解説をふまえた付注に予想以上の手間がかかっている)が、代わりにパスカル研究の論文を新たに1本公刊した。また、2)については、論文を1本、書評を1本公刊し、フランスにて専門家の集う研究会で口頭発表を行った。ほかにも、研究課題に直接間接に 関連する複数の成果が得られた。以上を考えれば、研究は順当に進展したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も上記の二つの方向性に即して研究を推進していく。 1)については、あと1年間で『パンセ』翻訳を4分の3程度まで進めたい。その後も作業を継続し、訳文を入念に再検証し、解説文などを執筆することで、拙訳『パンセ』をできるだけ近いうちに公刊したい。 2)については、2020年度中に2つの論文を学術研究誌に発表する予定である。 また、私の主宰する「フランス近世の<知脈>」研究会などで口頭発表を予定している。なお、新型コロナウイルスの感染拡大状況が収束したら、フランス国立図書館での研究調査を実施したい。
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Causes of Carryover |
予定していた国内出張を1回取りやめた。次年度(2020年度)はこの分をノートパソコン購入費の一部に活用したい。
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