2017 Fiscal Year Research-status Report
移民・郊外・記憶-女性作家から考察するフランス語マグレブ文学
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17K02597
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
石川 清子 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (30329528)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レイラ・セバール / ヤミナ・ベンギギ / 移民 / 記憶 / 女性 / 郊外 / マグレブ / ポストコロニアル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「移民」「郊外」「記憶」というキーワードのもとに、20世紀半ばから現在までの、出自にマグレブ(北アフリカ)が関わる女性作家の仏語主要作品を具体的、総合的に考察することである。その対象として、レイラ・セバールとヤミナ・ベンギギの2名の作家に対象を絞った。今年度は研究初年度であり、これまでの関連研究を継続するかたちで、論文発表、海外での学会発表を行い、国内での作家紹介、翻訳への取り組み、作家とのコンタクトをとることができた。 5、6、7月にはアシア・ジェバール、レイラ・セバール、ヤミナ・ベンギギを全国紙夕刊のコラムで紹介した。6月にはCIEF(フランス語圏研究学会)の世界大会でセバール第一小説(移民/郊外/記憶、上記すべてのキーワードに関わる)に関する発表を行なった。その発表原稿をもとにして内容を充実させた仏語論文を勤務校紀要に掲載した。また、昨年度参加したイタリアとフランスの移民と文学をめぐるシンポジウムでの発表原稿をもとに、フランス移民と文学、そしてフランス文学というカテゴリーのなかで生じる問題に関する論文を、シンポジウム主催研究所紀要に掲載して頂いた。ベンギギ『移民の記憶』(映画と同タイトルのテキスト)の翻訳原稿下書きを終わらせ、版元に預けた。また、ベンギギ本人とは以前からコンタクトをとっていたが、年度末3月に本人と会い、挨拶をかねた情報交換の機会をもち、作品理解のための多くの示唆を得た。 以上、当初設定した2名の作家研究と翻訳に向けての作業という意味で、方向性を示せる活動ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
翻訳原稿の完成、作者と実際に会い情報交換ができたため、翻訳刊行が一歩進み、これは当初の予定に沿うものである。また、フランスの移民にまつわる文学について論文発表できる機会を得たことで、本研究の基盤となっている問題点、つまりポストコロニアル研究・ジェンダー研究として、文学をフランスとマグレブの関係性から見るという問題を言語化して整理できた。二作家に絞って表現方法、スタイル、世代、境遇など異なるセバールとベンギギの作品の共通性を強く確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはベンギギ『移民の記憶』翻訳書を刊行までもっていく。ベンギギについては、国内学会でのシンポジウム発表予定がある。10月末にはアルジェのブックフェアで、世界のアシア・ジェバール翻訳者の共著刊行に合わせてイベントが予定されているので、参加を検討し、可能であれば海外のマグレブ文学研究者・翻訳者との交流をはかりたい。 また、国内への情報発信として、これまで書いた論文を見直し、マグレブ仏語文学でまとめた論集の準備に着手し、早めにこの計画を実現する。
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Causes of Carryover |
書籍選定の時間不足だったため、次年度は書籍購入(必要資料を揃える)に力を入れる。また、研究会かシンポジウムのかたちで国内の研究者を招聘したいので、その旅費と謝金にあてる。
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Remarks |
毎日新聞夕刊コラム「世界文学ナビ」に次の3作家を紹介。 1) 中東編25 アシア・ジェバール 作品に織り込んだ闘争心(5月10日) 2) 中東編26 レイラ・セバール 空白のアルジェリア追求(6月7日) 3) 中東編27 ヤミナ・ベンギギ 移民の歴史 繊細な視点で(7月5日)
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Research Products
(3 results)