2019 Fiscal Year Research-status Report
移民・郊外・記憶-女性作家から考察するフランス語マグレブ文学
Project/Area Number |
17K02597
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
石川 清子 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (30329528)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ポストコロニアル / 移民 / 郊外 / ジェンダー / フランス語圏文学 / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究のまとめとなる時期で、ヤミナ・ベンギギの翻訳書『移民の記憶』刊行が研究実績の第一にあげられるが、その周辺をめぐる事象(翻訳、フランスにおけるマグレブ移民、フランス語マグレブ文学、文学と映画など)についても考察、発表をした。 本研究のゴールの一つである上記翻訳書をマグレブ文学叢書の一環として9月に刊行した。移民とその次世代、かつ女性というフランスにおけるマイノリティといえる側からの映画とテキストによる表現を日本語で紹介することは、文学・歴史学・社会学・美学という諸領域で、フランスにおける移民の/による表象を考えるうえで基本的かつ重要なことと考える。この書のあとがきで、本作品の重要性、フランスにおける戦後マグレブ移民の歴史的振り返りなどをまとめて紹介した。 5月には、日本フランス語フランス文学会春季大会で、アルジェリア文学についてワークショップを行い、当該文学の表現と相の多様性について研究会メンバーとともに共同発表した。参加者の質問から、マグレブだけではなくカナダやベルギーなどのフランス語圏文学とフランス文学との関係性(それぞれ独立してあるのか、フランス文学に従属しているのか、各地域固有の文学とはあるのか、など)を考える機会ともなった。1月には、ベンギギ作品における息子と父のつながりを口頭発表した。これまで娘ー母の結びつきを見ていたので、研究会主催者からの逆方向ともいえる視点の提案は貴重だった。2月のフランス出張ではアシア・ジェバールの翻訳について口頭発表、またBNFなどで資料収集を行なった。 訳書刊行に並行するかたちで、勤務校の刊行物に、マイナーな地域の文学と翻訳のあり方を、また学会刊行誌に、自分の翻訳も含まれるフランス語マグレブ文学の翻訳叢書について紹介した。ベンギギ作品翻訳を軸に、その周辺に関わる領域の問題を広く大きく考えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に引き続いて、研究のメインとなる国アルジェリアの政情不安定な状況が続き、主要なイベントと予定していたアルジェリアでのシンポジウムの開催目処がつかないため。シンポジウムは計画当初、本計画の大きな部分を占めていたが、状況を鑑みて検討が必要である。それ以外は、翻訳刊行や論文発表、口頭発表など計画どおり進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
アルジェリアでのシンポジウム開催を今後の研究の主要目標としたが、現在(2020年4月)の世界的新型ウィルス感染状況から、国外への移動は年度内でかなり難しいかと予想される。それでも、一昨年刊行したアシア・ジェバールの翻訳をめぐる共同論集を延長するかたちで、一人の作家を軸に広がる翻訳という営為の特性と翻訳者の役割について、引き続き考察したい。学会やシンポジウムは中止が相次いでいる。資料収集もweb上での作業がメインになりそうである。そういう状況下で本研究を進めるとしたら、1)論集刊行に向けての作業、2)翻訳、3)最新の研究動向の調査に絞られそうである。数字は優先順位。とりわけ論集刊行に向けての作業は、これまで時間的余裕がなかったので、本格的に取り組み納得のいくかたちにしたい。また、翻訳は日本への作品紹介という点からスピーディーさが肝要なので、ベンギギに続いてレイラ・セバールの小説訳を仕上げる。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続き、アルジェリア国内で起きている民主化運動が活発に行なわれ、学術シンポジウムが開催される目処が立たずにいる。本研究ではアルジェリア出身女性作家をめぐる国際シンポジウムを企画し、参加することを目標の一つにしていたので、「場」が整わない限りシンポジウムが開催できず、研究が遂行できない。 次年度においてもこの状況は変わらないであろうし、また新型ウィルスの世界的流行が席巻するなか、海外渡航を可能にする状況は悪化しているが、資料収集と研究者間情報交換のため、可能な範囲で海外出張を行ないたい。付随して本研究の周辺部を補う基本的研究書の購入をする。
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Research Products
(6 results)
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[Book] 移民の記憶2019
Author(s)
ヤミナ・ベンギギ(翻訳)
Total Pages
277
Publisher
水声社
ISBN
4801002447