2019 Fiscal Year Research-status Report
17・18世紀フランスにおける文献資料に見るモリエールと古典ラテン喜劇作家の受容
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17K02598
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
榎本 恵子 大妻女子大学, 文学部, 講師 (30782867)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フランス演劇 / モリエール / 古典ラテン喜劇 / ルイ14世 |
Outline of Annual Research Achievements |
モリエールは国王ルイ14世の要望に応え、文化的政策の面から絶対君主制確立に一役買った。彼が古典ラテン喜劇作家から受け継いだ理想の喜劇を具現化したからである。モリエールが舞台上に描き出す「現実の世界」と為政者と観客が求めるものを提供した作品に17世紀フランス文学界は、彼を「プラウトゥスとテレンティウス再来」であると高く評価した。以降モリエールは「フランス喜劇の父」と称されるようになった。同時に悲劇より下に見られてきた喜劇がモリエールの本格喜劇により現実を映し出す鏡として、観客を「愉しませながら教え諭す」ものであるという認識が受容された。モリエールの死後、彼を凌ぐ作家が現れなかったため、喜劇は衰退したかのように見えた。しかしモリエールの作品が人々を魅了し続け、21世紀の我々が見ても色あせることのない普遍性を有していることは周知の事実である。 ではこの普遍性とは何か、時代により人々の嗜好が変化してもモリエールの作品が評価され続けたのはなぜか。17世紀から現在に至るまで「喜劇の父」として評価されてきたモリエールの真の評価を検証してきたが、時代の流れの中でその評価に変遷があった。しかし、興味深いことにそれは時代の求める嗜好によって変化するが、それでも最終的にこの劇作家を「評価する」という事実は変わらなかった。 2019年9月に17、18、19世紀の専門家を交えてワークショップを開催し、それぞれの世紀におけるモリエールの受容を考察した。その結果、いつの時代においても、劇作に関わる者だけでなく、劇作に興味を持つ文化人にモリエールが多大な影響を与えていることが浮き彫りになった。また申請者自身の研究において、19世紀ロマン主義演劇における古典主義演劇はドイツロマン主義の影響を受けており、そのドイツロマン主義演劇はモリエールを熟考した18世紀フランスの演劇論の上に成り立っていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度に開催したワークショップはフランス本国における新学年開始の9月になったため、研究者を招聘することができず国内の研究者を招聘した。そこで春期休暇を利用して、フランス在住の研究者とその結果を共有する予定であったが、新型コロナウィルスによる感染拡大を受けて延期にした。今後の情勢をみて本研究のまとめを進めていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず春期休暇に延期したフランス在住の研究者と前年度のワークショップの内容を共有したい。 そして、ワークショップにおいて17,18,19世紀と時の流れの中にモリエールのイメージは存在し評価されていたが、そのイメージはそれぞれの時代に合った定説の上に成り立っていたことが判明した。モリエールをはじめとする古典主義演劇の受容が文学史的流れの中での総括と、そこに属する文壇の評価との間に乖離があったということである。今後は17、18世紀におけるモリエールの評価をまとめ、それが19世紀にどのように受容されていくのかとテーマを拡大していく準備をしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2020年3月、春期休暇を利用して、フランス在住の研究者とその結果を共有する予定であったが、新型コロナウィルスによる感染拡大を受けて延期にした。今後の情勢をみて年内に渡仏、本研究のまとめを行う予定である。
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Research Products
(1 results)