2022 Fiscal Year Annual Research Report
The Reception of Moliere and Latin Comedy Writers in France in the 17th and 18th Centuries: Studying the Archives
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17K02598
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
榎本 恵子 大妻女子大学, 文学部, 准教授 (30782867)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フランス演劇 / モリエール / 古典ラテン喜劇 / 17世紀フランス / ルイ14世 |
Outline of Annual Research Achievements |
17世紀三大劇作家の一人モリエールを「古典ラテン喜劇作家プラウトゥスとテレンティウスの後継者」と呼ぶ時、「プラウトゥス的作品」、「テレンティウス的作品」が持つイメージと彼らの作品が与えるイメージには乖離がある。しかし個々のイメージは詳らかにされず漠然としたイメージが受け入れられていた。博士論文において16、17世紀の教育機関、翻訳論、演劇論とその実践を検証し、当時も今も曖昧なその呼称と評価の内実を明らかにした。そこで本研究では、17、18世紀の文献資料からモリエール、古典ラテン喜劇作家の名前がもたらすイメージと作品に対する批評、社会・政治に及ぼした影響を検証することにした。 まず絶対君主制確立において重要な役割を持つルイ14世のヴェルサイユ宮殿での祝祭におけるモリエールの活躍に焦点を当て、彼の古典喜劇作家から継承した理想の喜劇が社会の悪を暴き、また宮廷の娯楽として見る者を楽しませたこと、そして祝祭の報告書から、フランス文化、社会、政治内でのモリエールの評価を明らかにすることに成功した。 モリエールの死後設立した劇団コメディ・フランセーズで1978年までに上演された作品の劇作家第一位はモリエールで第二位のラシーヌと大きく差つけていること、帝政期以降の学校教育の学習内容に含まれていることから、モリエールの評価と影響力が継続しているという仮説を容易に立てられた。しかしモリエールの人気が途絶えた時期があり、その後その影響が語られなくなっていたという定説があることが判明した。そこでワークショップを開催し定説と事実の齟齬を明らかにすることがモリエールの専門家に課せられた使命であると確信した。そして第一歩として、モリエール作品の登場人物の神話性を検証、新しい解釈と演出の誕生を明らかにし、モリエールが彼の死後もその存在が大きく、フランス喜劇の父として君臨し続けていることを証明した。
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