2022 Fiscal Year Annual Research Report
The Formation of a Tourism Perspective in the Discourse of Modern French Publishing Culture
Project/Area Number |
17K02599
|
Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
田口 亜紀 共立女子大学, 文芸学部, 教授 (90600502)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | フランス文学 / 観光 / ツーリスト / 旅行記 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度では、十九世紀の出版時から、現代にいたるまで、読み継がれられているイポリット・テーヌの旅行記の二つのバージョンVoyage aux Eaux des Pyrenees と Voyage aux Pyreneesの分析を行った。それによって、実用書と文学の境界のあいまいさについての考察となった。 本研究計画では、近代フランスにおいて観光の概念の変遷をたどった。19世紀フランスでは、相次いで万人向けのガイドブックが刊行されたことで、無目的の旅、楽しみのための旅、つまり「観光」という考え方が生まれた。職業作家による旅行記にも「観光」の視点が確認できる。観光とは旅から派生したものであり、旅と分かちがたく結びついている。旅は異なった人種や民族、文化圏などの間にある反目や偏見を取り除き、人々が相互理解と融和に向かうために、異なる視点を獲得する契機となる。旅は日常を離れて行うものであるので、それを行う者に見慣れない文化との対峙を余儀なくさせる。価値観の揺らぎによって異文化理解が促されるともいえる。それらを刊行されたテキストから読み解くことを計画した。 旅の報告がノンフィクションの形式で、具体的な背景の中で十全に語られるとき、そこに使用される語いにも注目する必要がある。特に十九世紀フランスは、voyageとtourismeの概念が劇的に変容する時代であることから、本研究では「旅」と「観光」の概念の変遷をあとづけを試みたが、計量テキスト分析を用いる方法を採用する道筋が開け、今後の研究に引き継がれていくだろう。
|