2018 Fiscal Year Research-status Report
A Mythological and Comparative Literary Study on the Tradition and the Innovation of Mythological Narratives in Greco-Roman Classical Literature
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17K02602
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
佐野 好則 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (50295458)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 西洋古典 / 文学論 / 宗教学 / 思想史 / 比較文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度には、8月にオックスフォード大学への研究旅行を実施し、ボドレイアン図書館での文献調査を行い、海外研究協力者であるM. Davies教授, P. Finglass教授, A. Scafuro教授との研究会議を開催した。そこで得た貴重な情報及び知見を活用して以下の中間的研究成果を公表した。まずホメーロス叙事詩に関する文献調査に基づく研究成果としてM. Davies教授の近著の書評を『西洋古典学研究』67号 (2019)に掲載した。これには「叙事詩の環」と『イーリアス』の関連性についての最新の研究動向を批判的に紹介する意義がある。また『イーリアス』に関する研究書『ホメロス「イリアス」への招待』(ピナケス出版 2019年)に2つの章(「ホメロス問題」と「パラデイグマ(例話)」)を掲載した。「ホメロス問題」には、『イーリアス』の主要な研究方法のうち口承詩理論と分析論の発展と課題を概観し、それに基づいて詩人の創造性のありかを検討したところに意義がある。「パラデイグマ(例話)」には、『イーリアス』の登場人物の科白に織り込まれた様々な神話叙述の作品全体内における配置や、それらの神話叙述と作品のメインプロットとの関わり、比喩の用法との比較などを通じて、『イーリアス』におけるパラデイグマの重要性を包括的に解明した意義がある。他方、プロメーテウス神話に関する研究としては、悲劇『縛られたプロメーテウス』における、姿を牛に変えられた女性イーオーの神話叙述について、記憶とアイデンティティーのモティーフに注目して英語で論文を執筆し、海外での出版に向けて原稿を提出した。さらにヘーロドトス『歴史』第1巻におけるクロイソスとソローンの対話場面に関する英語論文の出版に向け最終準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の第2年次に当たる2018年度に、ホメーロス研究の基礎的領域に関する書評を出版したこと、重点研究領域のうちの1つであるホメーロス叙事詩に織り込まれた神話叙述の分析に関して、『イーリアス』の研究書に研究方法に関する「ホメロス問題」の章と、登場人物の科白に盛り込まれた神話叙述に関する「パラデイグマ(例話)」の章を中間的研究成果として出版したこと、そしてもう一つの重点研究領域であるプロメーテウス神話に関する比較作品論的研究に関しては、悲劇『縛られたプロメーテウス』のイーオー場面について、記憶とアイデンティティーのモティーフに注目して論文を英語で作成し2019年度中の出版を目指して原稿を提出したこと、ヘーロドトス『歴史』第1巻のクロイソスとソローンの対話場面についても英語の論文を2019年度に出版できるよう最終準備が進んでいることから、おおむね順調に進展していると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年次に当たる2019年度においては、ホメーロス叙事詩『イーリアス』における神話叙述の研究方法論として重要な分析論について、6月前半の西洋古典学会での口頭発表に向けて準備を進める。6月後半にホメーロス叙事詩『オデュッセイア』におけるトロイアの木馬エピソードの叙述の分析及び後代における受容の観点からポルトガルのコインブラ大学での国際学会における発表を行うための準備を進める。8月にオックスフォード大学への研究旅行を実施し、文献調査・収集と、海外研究協力者であるM. Davies教授、P. Finglass教授、S. Harrison教授との研究会議を開催して本研究の最終成果としての研究書の出版に向けてのアドバイスを得る。さらに悲劇『縛られたプロメーテウス』におけるイーオー場面について、叙事詩『名婦のカタログ』、バッキュリデース『ディーテュランボス』第5歌、アイスキュロス『嘆願する女たち』との比較作品論的な観点からの論文を作成するための準備を進める。
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Research Products
(4 results)