2019 Fiscal Year Annual Research Report
A Genetic Study of the Femme Fatale in Flaubert’s First Novels
Project/Area Number |
17K02607
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
大鐘 敦子 関東学院大学, 法学部, 教授 (50350541)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フローベール / 初期小説 / ファム・ファタル / ファタリテ / 女性像 / 「狂人の手記」 / Les Memoires d'un fou / 『聖アントワーヌの誘惑』 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度にあたる2019年度は、2018年11月 パリでの競売においてフランス国立図書館が36万4千ユーロで買い取ったフローベールの幻の草稿 Les Memoires d'un fou (『狂人の手記』)について、特別の閲覧許可がおり、転記・解読に着手した。フランス文学で描かれた最も美しい恋愛場面の一つである、『感情教育』の冒頭のアルヌー夫人とフレデリックの出会いは、この自伝的小説の記述に遡り、「非常に重要な価値を持つ草稿」といわれている。しかしこれまでは個人コレクターの所有であり、信頼できるプレイアッド版のエディションがでたのはまだ2001年のことである。この作品には、語り手にとっての「宿命的女性像」が描かれており、休暇を利用して現地で140ぺージの転記を完成させ、2020年3月にルーアン大学フローベール研究所サイトに発表した。これまで判明していなかったが、この作品の初出Revue Blahche誌 と初版本Floury版で削除されている箇所について、Gallicaでは判別できない紫色の検閲らしき線を4箇所見出すとともに、その戦略を分析し、公開することができた。競売時には230箇所といわれていた作家による訂正箇所や加筆、書き直しは560箇所に上った。2019年夏の作業では、草稿部門ディレクターIsabelle le Masne de Chermont女史からこの貴重草稿の解読作業に対して謝意を表された。 初期から中期にかかる作品として引き続いて解読と分析を心がけてきた前研究課題の『聖アントワーヌの誘惑』(1856)第2版については、2019年3月にルーアン大学フローベール 研究所サイトから、193枚の草稿の初のディプロマティック転記の校訂版を世界に公開することができ、matiereの語について、従来なかった新しい知見を紹介することができた。
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Research Products
(7 results)