2020 Fiscal Year Research-status Report
Brightness and Colour: Studies on their Interconnection and Representations in the Literature of Antiquity
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17K02608
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Research Institution | Kyoto Seika University |
Principal Investigator |
西塔 由貴子 京都精華大学, 人文学部, 研究員 (60411948)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光と輝き / Argos / Marmareos / 海の色と輝き / 色彩表現の表象生 / 色と音 / 色彩感覚と認識論 / ホメロス叙事詩 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍に振り回され、依然として授業への対応に追われ見通しが立たないなか、時間をつくりできるかぎり研究計画の実現に努めた。 (1) 4月に予定していた外国人招聘講演会は開催直前に先方の研究者が国外へ渡航不可となり延期。先方は日程の再調整の意向を示しているが、いつ実現するのか目処が立っていない。(2) 夏季・春季ともに海外出張を予定していたが渡航困難で断念。(3) 研究成果を発表すべく学会も何件かやむ無く見送らざるを得なかった。(4)さらに、学会はすべて中止かオンラインに移行。時差の都合もあり参加が極めて難しい。可能な研究会やセミナーに参加してみた結果、知見を得たものの、通常の形態の学会よりも有意義であったとは言い難い。 時間をつくり研究に取り組んだが、さまざまな制約のもとでめざましい成果が得られないなか、研究の延長を決断した。新しい色彩表現研究も十分とは言えない状況である。前年度から宙に浮いていた提出済の欧米雑誌から未だに連絡がないものもある。デンマークの国際学会の論文集を刊行する計画であったが残念ながら取り消しとなった(本論文は本研究の成果として後日公開したい)。
一方、(1) マドリードの学会からは連絡があり、論文校正に取りかかったが先は未定。(2) ベルンの学会発表の論文集については、コロナ禍になる前からの予定だった11月の締切に間に合わせ提出済、現在連絡待ち。(3) 論文2編、このような状況下で海外文献(AOQU2 Epica Marina)と(Ricerche a Confronto)に出版され、今後の自信にもつながる大きな業績と考える。また、2021年9月開催予定の国際学会(ドイツ)に向け要旨を提出したところ受理され、発表が決まっている。このような状況下において一筋の光明が見いだせたことは幸いである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍の終息が見えず、2020年度の秋学期はオンラインと対面併用型、授業関連業務が膨大、文献を検索する余裕すらない状況で、2021年度も課題が山積。 (1) 上述の外国人招聘講演会の実施を1カ月後に控えたところで延期となり、現在、日程の再調整奔走中である。 (2) 当初予定していた海外出張も頓挫。強行しても、現地の図書館や博物館などの研究関連機関が閉鎖中、或いは現地に着いてから閉鎖になる可能性もあり、打開策を検討している。 (3) 海の上に映る光の一つの事例として marmareos を取り上げ、前年度よりも考察を掘り下げることができた(AOQU2 Epica Marina)。光の輝きには闇も必要である。ホメロスの場面描写の際、3Dのような効果を上げるため精巧な技巧を駆使して描かれているのではないか、という仮説を検証する大きな手掛かりとなった。 遠隔授業にかかる業務に追われ、研究は二の次にされる状態にあって、文献の精査、原典にあたって新たに用語を調べるなどは現状では厳しい。なんとか合間を縫って予定していた用語の分析考察に着手したいものの、今後の進展が非常に憂慮される。提出済の論文については、デンマーク学会論文集のように計画自体の存在も危ぶまれ、対応を検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
この深刻な状況下で推進方策を掲げること自体が課題だと思われるが、現時点は以下のようなことを考える。 (1) 文献渉猟とその精査・整理の早期再開、未着手の表現(aiolosなど)の分析考察への着手。「葡萄酒色の海」(oinopa ponton)については調べる資料の幅が大き過ぎ、現行の研究課題の枠を超えるため、次に持ち越してその精度を高めたい。 (2) 「輝く」を意味する古代ギリシア語の一つ sigaloeis に特化したドイツ Kiel での学会発表(9月)の準備。古代における色覚、視覚の認識論という新しい視点を大幅に組み込む。これまで考察した用語と比較検討を行い総合的な見解の提示を試みる。 (3) 状況が少しでも良くなれば、海外出張に向けた計画開始と、外国人招聘講演会の日程再調整。連絡待ちの論文の対処の検討。セミナーや学会はほぼ遠隔で実施されるため、時差を考慮しながら可能なものには参加し知識を広げる。 今後もこうした事態が継続されることが予想されるが、本研究の中核である色の上に映る「光」「輝き」が、「音」と「動き」とともに絶妙なバランスをとったステージ上でどのように彩られているのか、どう認識されたのか(認識され得るのか)、ホメロスに描かれる光景を中心に、その意義や効果の深層に迫る。後半には前年度の分を少しでも進める。
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Causes of Carryover |
2020年4月予定であった外国人招聘講演会開催に要する経費を保留する必要がある。2020年は研究自体が凍結状態であったため研究文献の狩猟もままならず、研究文献購入など研究全般にかかる経費を使用しないまま延長の運びとなった。 (今後の使用計画)研究文献などの渉猟にかかる諸経費を次年度に使用する。また、分析考察に必要な関連図書の購入・研究成果発表に要する諸経費を未使用額に充てる。状況が改善されれば海外出張費─学会発表や在外研究にかかる諸経費─が発生するので、それに充てる。日程の再調整を図る(予定)の外国人招聘講演会開催のための経費が、現時点では見通しも立たないが、この講演会にかかる諸経費を考慮する必要がある。しかし、2021年度内の開催も危ぶまれ、先方の予定によっては講演会の企画自体が頓挫することも念頭におき、状況変化に柔軟に対応できる研究方法の選択肢を準備しなければならない。
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[Book] Epica Marina I, 22020
Author(s)
Yukiko Saito,"Viewing the Sparkling Scenery of the Sea with Marmareos" (pp. 37-71).
Total Pages
324
Publisher
Universita degli Studi di Milano: Dipartimento di Studi letterari, filologici e linguistici
ISBN
9788855264051
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