2021 Fiscal Year Research-status Report
Brightness and Colour: Studies on their Interconnection and Representations in the Literature of Antiquity
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17K02608
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Research Institution | Kyoto Seika University |
Principal Investigator |
西塔 由貴子 京都精華大学, 人文学部, 研究員 (60411948)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | sigaloeis / porphureos / 色彩 / 紫 / 輝き / ホメロス / 共感覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も対面とオンライン併用の授業運営は過酷で、研究に従事する時間をとるのは困難であったが、研究遂行すべく前進に努めた。 (1) 計画していた海外出張は今年度も全て見送らざるをえなかった。(2) 当初、9月にドイツのキールで開催される予定であった国際学会(European Association of Archaeologists)は全てオンラインに変更となり、オンライン上で研究発表を行った。“Touching Objects, Feeling Materials”のセッションの中で、新たに ‘sigaloeis’ という「輝く」を意味するギリシア語の考察に取り組み、西洋古典文学の立場から感覚や認識論を取り込んだ見解を、考古学や人類学の研究者に示せたことに一定の成果を見出すことができる。(3) 研究成果発表のための学会等も思うように参加できない。(3) 見通しがたたない外国人招聘講演会はコロナ禍のなか、今年度も開催に至らなかった。
他方、(1) 春季の間に2022年に向けて提出した要旨(人間の相互理解の重要な一要素としての光や色彩をホメロスから分析考察する試み)が受理され、8月にキュプロス大学で開催される学会 “The Art of Reconciliation in Classical Antiquity”での発表が確定した。(2) 昨年度提出した論文は再修正を行い提出済である。‘porphureos’ の意義を再考する良い機会であった。(3) 上述の9月に発表したものを含め、コロナ禍で宙に浮いたままの複数の論文を国際誌に掲載させるべく加筆修正中である(meli chloron や chalkeon hupnon)。(4) 以上と併行して、これまでの研究成果の中間総括作業にも取りかかり、推敲中である。閉塞した状況ながら上記作業の遂行により、今後の研究につながると確信する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
教学面における対面オンライン併用の授業や大学が求める学生への「配慮」の対応はが研究に及ぼす影響は多大である。 (1) 海外出張の再延期。現地で有意義な活動が可能かどうか不確定であったため断念した。次年度に設定する。オンライン上での学会には参加できて良かったが、通常の学会における幅広い知見の獲得は困難である。ドイツで開催の学会(オンライン)で発表はしたものの、期待する知見は得られなかった。 (2) 外国人招聘講演会の開催は見通しがたっていない。先方の事情も考慮し、判断しなければならない。 (3)「輝き」に関連する古代ギリシア語はたくさんあるのだが、今年度は ‘sigaloeis’ に集中した。‘sigaloeis ’という言葉の深層には、単純に輝きだけではなく、その文脈(景観)に溶け込む光彩の意義が感じられ、詩人の技巧であるという見解を見出せた。一方、他の用語はコンコーダンスに拠りその端緒を開きつつある。
「葡萄酒色」一つでも、その上に映える光の存在は重要であるため、次の研究課題として残す可能性を検討中である。現状では原典や研究文献の精査は非常に厳しいが、集中できるまとまった時間を取ることも研究者に求められる資質であることを自覚しつつ、今後の研究方法を策定する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も厳しい状況が想定されるが、現時点で考えられる推進策として以下の通りである。 (1) 研究文献渉猟とその精査・整理の早期再開と、未着手の「輝き」を示すほか用語(‘auge’ など)の析出・分析・考察の早期開始。 (2) 未刊行・未発表の論文と、今年度執筆した論文の編集・修正に専念し、刊行向けて準備する。 (3) キュプロスで開催される2022年8月の研究発表(確定済)の準備。光輝きと人間の感覚との連関性という新たな知見を見出せることが期待される。キュプロス含め、海外出張に向けた計画の開始、そして頓挫している外国人招聘講演会への調整・対応。
今後の状況に対応しつつ研究を進めていくが、実は色と光とは密接に関わっているため、この研究課題で得た成果を展開し、次の研究申請の準備に入る。「葡萄酒色の海」は深奥な研究課題であり、確度の高い見解(仮説)を立てるにはさらなるの研究の深化が必須であり、次年度以降の課題としたい。現在再考・修正中の内容に専心し、‘sigaloeis’ や ‘auge’ など、光の意義、「色」(カラー)の原義、区別することへの問いを投げかけ、私たち人間の感覚や認識をもとに、いろいろな可能性を秘めた光輝きと色の相関性について示唆し、次につなげるための総括を行う。
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Causes of Carryover |
2021年度も全体的に研究遂行は困難であったため研究全般にかかる経費をあまり使用することなく延長することになった。頓挫している外国人招聘講演会のため経費を次年度に残す必要があるが、開催不可となった場合はキャンセル料が発生する。 (今後の使用計画)分析考察に必要な研究文献等の渉猟にかかる諸経費を次年度に使用する。コロナ禍の状況次第ではあるものの、関連図書の購入・研究発表等に要する諸経費を未使用額として計上し、新たな見地を拓くことを試みる。現時点で研究発表が確定済みの、キュプロス大学で開催予定の国際学会に参加するための経費のほか、ギリシアなどへの出張にかかる諸経費も使用する予定である。状況の変化に応じて柔軟に対応していきたいと考える。
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