2020 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of Playwriting and Stage Space in Futurist Theater
Project/Area Number |
17K02617
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
菊池 正和 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (30411002)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 未来派演劇 / ピランデッロ / ラインハルト |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の最終年度であった令和元年(平成31年)度の3月に実施予定であったロヴェレートとローマにおける現地調査が、コロナ禍により実施できなかったために、研究機関を延長したものの、令和二年度も残念ながら上記の現地調査の実施は叶わなかった。そのために舞台美術における造形性や抽象性を追求したデ・ペーロやプランポリーニに関する一次資料の調査は持ちこされ、最終年度は研究課題のもう一つの柱である未来派演劇の劇作法の影響関係に焦点を当てた研究を進めた。 最終年度の成果としては、2020年3月に『言語社会共同研究プロジェクト2019 ヨーロッパ超域研究1』誌に発表した単著論文「ドイツにおけるピランデッロの受容 -ラインハルトによる『作者を探す六人の登場人物』の演出を中心に」が挙げられる。この論考では、ピランデッロの代表作『作者を探す六人の登場人物』のドイツ公演を取り上げて、ドイツにおける初期のピランデッロ受容について考察した。とりわけ、1924年のラインハルトの演出による公演と、翌年のピランデッロ自身が演出を務めたローマ芸術座による公演を当時の劇評などから再構築し、それらの公演に対する批評家たちの言説を分析した。そして、劇作家の立場からの演出家や俳優に対する不信感を、舞台上で2つのエクリチュール、すなわち「登場人物」に仮託された戯曲テクストの精神と演出家や俳優による舞台上での創造行為を対峙させるという構造のうちに表明したピランデッロの意図を、ラインハルトの演出がいかに適切に上演したかを論証した。 最終年度に実施できなかった現地調査とそこから期待される未来派演劇に特有の舞台空間論に関しては、令和二年度から採択されている研究課題「未来派演劇における身体性の研究-その抽象化と機械化の意味」のなかで論文の形で明らかにしたい。
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