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2018 Fiscal Year Research-status Report

第二次世界大戦下のドイツにおける前線書籍販売とナチスの文芸政策

Research Project

Project/Area Number 17K02621
Research InstitutionKagoshima University

Principal Investigator

竹岡 健一  鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (30216874)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2020-03-31
Keywordsドイツ文学 / ナチズム / 前線書籍販売 / 文芸政策 / 第二次世界大戦 / 書籍 / 出版 / 読書
Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、第二次世界大戦下のドイツにおける前線書籍販売とナチスの文芸政策のかかわりを明らかにすることにある。平成30年度には、研究計画に基づき、前線書籍販売の販売形式と市場形態に関する考察を中心に研究を進め、次のような成果を得た。
(1) 前線書籍販売の販売形式について、前線書店センターによる移動販売と固定販売、および民間の出版社による野戦版と野戦郵便版の販売を中心に詳しく考察した。また、その過程で、前線兵士への本の供給には、前線書籍販売以外にも、「ローゼンベルクの本の寄付」など幾つかの形式がみられることが明らかになったため、それらについても補足的に跡づけた。
(2) 前線書籍販売の市場形態について考察し、ドイツ国内の書籍市場から切り離された、独立した市場であったこと、民間の出版社にとって大きな市場可能性と著しい利益の高まりを意味したこと、前線書籍販売のための優先的な紙の供給がドイツ国内での本の販売の甚だしい不足を招いたことなどを詳しく解明した。
(3) 前線書籍販売の販売実績や野戦版・野戦郵便版の刊行状況についても綿密な考察を行い、前線兵士に供給された本の内容が娯楽的著作、古典的著作、世界観的著作に大別されるとの仮説を得た。
以上の研究成果は、第二次世界大戦下のドイツにおける前線書籍販売とナチスの文芸政策のかかわりに関する研究において、先駆的な意義を有する。これらのうち(3)については、本年度口頭発表を行う予定であったが、台風の影響で中止となり、次年度の早い時期に行うことが決まっている。また、(1)、(2)、(3)については、次年度中に査読付きの学術雑誌等に印刷発表を行う予定である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

(1) 前線書籍販売の本の販売形式について、主要な3つの形式の詳細を明らかにした上で、野戦郵便版については71の出版社のシリーズ名と刊行数を網羅的に把握することができ、この点で当初の計画はほぼ達成された。また、それに加えて、「ローゼンベルクの本の寄付」など、前線書籍販売とは異なる形での前線兵士への本の供給についても考察を施し、研究の射程を広げることができた。
(2) 前線書籍販売の市場形態について、ドイツ国内の書籍市場から独立した市場であった、民間の出版社に大きな市場可能性と著しい利益の高まりをもたらした、前線書籍販売への優先的な紙の供給がドイツ国内での本の販売の甚だしい不足を招いたといった特色を詳しく把握することができ、この点でも当初の計画はほぼ達成された。とりわけ、野戦版と野戦郵便版が民間の出版社に大きな利益獲得の道を拓いたことは、「独裁」や「統制」という概念で特徴づけられるナチス・ドイツの一般的なイメージを覆すという意味で、きわめて興味深い研究成果である。
(3) 前線書籍販売の販売実績や野戦版・野戦郵便版の刊行状況の綿密な考察に基づいて、前線兵士に供給された本の内容についても考察を行い、一定の割合で古典的著作や世界観的著作が含まれるとの仮説を得たことは、当初の計画を上回る成果である。

Strategy for Future Research Activity

平成31年度には、当初の計画の通り、(1) 前線書籍販売で販売された図書の内容的特色の把握、(2)ナチスの文芸政策とのかかわりの考察、および(3)研究成果の総括を行う。
図書の内容的特色の把握については、民間の出版社の野戦版と野戦郵便版、前線書店センターの出版物、国防軍関係の出版物を中心に図書リストを作成した上で、綿密な分析を行う。また、その結果を踏まえて、前線書籍販売とナチスの文芸政策のかかわりについて詳しい考察を行う。予備的な研究では、前線書籍販売で提供された本の大半は娯楽的著作であり、ナチスのイデオロギー的な文芸政策は第二次世界大戦の勃発とともに破綻したとの仮説が得られており、それによって、「独裁」や「統制」という既成概念とは異なるナチズムの一面が明らかにされ、ナチズムと文学のかかわりに関する研究に新たな展開がもたらされることが期待される。だが、本研究で得られた新たな知見を踏まえて十分な検討を加えた上で、最終的な結論を導く。
平成31年度の研究成果については、国際学会(アジア・ゲルマニスト会議)で口頭発表を行い、査読付きの学術雑誌等に発表する。
最後に、本研究全体の成果を総括する報告書を作成し、公表する。

Causes of Carryover

(理由)2018年9月30日(日)に予定していた日本独文学会秋季研究発表会(於名古屋大学)での口頭発表が、台風24号の影響で中止となったため、次年度使用額が生じた。
(使用計画)予定していた口頭発表は2019年6月9日(日)に日本独文学会春季研究発表会(於学習院大学)で行うことになったため、そのための旅費に充てる予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2018 Other

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] 前線書籍販売の関連団体について――公的機関と民間の出版業者2018

    • Author(s)
      竹岡 健一
    • Journal Title

      九州大学独文学会『九州ドイツ文学』

      Volume: 32 Pages: 15-29

    • Peer Reviewed
  • [Remarks] 竹岡研究室

    • URL

      http://ecowww.leh.kagoshima-u.ac.jp/staff/takeoka/

URL: 

Published: 2019-12-27  

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