2017 Fiscal Year Research-status Report
Emergence of Modern Russian Literature--Country Estate in History of Russian Literature
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17K02625
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Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
坂内 徳明 放送大学, 東京多摩学習センター, 特任教授 (00126369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥山 祐介 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (40466694)
金澤 美知子 日本大学, 芸術学部, 研究員 (60143343)
佐藤 千登勢 法政大学, 国際文化学部, 准教授 (90298109)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ロシア貴族屋敷 / ウサーヂバ現象 / ロシアの基層文化 / 近代ロシア文学 / 都市近郊の娯楽空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度にあたる平成29年度には、研究全体の方向性を再確認し、研究メンバー各自のテーマ設定ならびに問題所在を具体化・深化させるとともに全体で共有するための討議を行った。それにもとづき、本研究を遂行するために必要な情報(本国ロシアならびに欧米)を獲得する目的で文献調査ならびに現地調査を行い、また、今後の研究の方向性とオリジリテイの創出に向けた議論を重ねた。 本研究の基本構想は、研究計画調書に記載したとおり、18~20世紀初頭のロシア各地に広く存在した貴族屋敷(ウサーヂバ)文化という現象が、近代ロシア文学の誕生・成長と発展の過程と構造的に繋がり、ロシア文化総体を理解する上で不可欠であること、言い換えるならばロシアの基層文化を形成していることを文学のみならず、歴史、建築・庭園・芸術等の多くの分野を視野に入れて明らかにすることにあった。この出発点にまったく変更はなく、近年の本国ロシアにおける関連分野の研究史を見る限りでも、そのことに間違いないとの確信を持つに至っている。 以上のことを前提として、本年度の実積は次のとおりである。 1)主に18世紀を中心としたロシア文学史におけるウサーヂバ表象の整理。2)18~19世紀前半の都市近郊における大衆娯楽の展開とウサーヂバとの関連の調査・考察。3)ウサーヂバ文化に関連するキーワード集作成の準備作業。4)現地調査として、スモレンスク地方のウサーヂバ調査、特に、フメリタ(グリボエードフ博物館=ウサーヂバ、館長との面談と情報交換)の他、グリンカ、プルジェヴァリスキィ、テーニシェヴァの屋敷跡の訪問。5)19世紀文学作品における「ウサーヂバ現象」をめぐる問題群の整理(一例として、19世紀前半の文学作品におけるウサーヂバ「遍歴」の形象性)。具体的な成果は、以下のリストに挙げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、本研究の基本構想は、文学と屋敷の連関性を探るという点でいくらか「唐突な」印象を与えるかもしれない。しかし、ピョートル大帝による近代化・西欧化から18~19世紀のめまぐるしい変化と20世紀初頭のロシア革命に集約される急激な社会変化にまで至るロシア近代をトータルにとらえた場合、ロシア近代文学の誕生・成長と展開と、同時並行的に展開し衰退していった貴族屋敷(ウサーヂバ)文化という二つの流れが近代ロシア文化の基層部分を構成しているという確信はゆるぎないものとなっている。その点から見て、初年度は全体として緩やかであるものの、上述の仮説を方向づけるべくなすべき課題の整理と本格的な研究の遂行の準備が着実にできたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した方向性にもとづき、研究メンバー全員のコンセンサスをとりながらも各自のテーマ研究を進めていく。具体的には、文献調査ならびに現地調査を継続することは当然であるが、各自の途中成果を持ち寄り、緊密に連携しつつ、まとめていく予定である。特に、本年度は全体で4年間の研究のちょうど中間にあたることから、中間報告書を発表する予定で準備を開始した。
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Causes of Carryover |
貴族屋敷(ウサーヂバ)の現地調査が予定では二回実施となっていたが、本務との関係で一回のみになったためである。今年度以降に調査する計画を立てて準備している。
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Research Products
(8 results)