2020 Fiscal Year Research-status Report
Emergence of Modern Russian Literature--Country Estate in History of Russian Literature
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17K02625
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
坂内 徳明 一橋大学, その他部局等, 名誉教授 (00126369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥山 祐介 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (40466694)
金澤 美知子 日本大学, 芸術学部, 研究員 (60143343)
佐藤 千登勢 法政大学, 国際文化学部, 教授 (90298109)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ウサーヂバ / 感傷小説 / 記憶と回想 / 地主貴族 / 家族共同体としての貴族 / 庭園と農地経営 / 貴族の巣 / 近代ロシア文学の形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近代ロシア文学が貴族屋敷(ウサーヂバ)を舞台として、18世紀半ば以降に「現出」したとの考え方に立ち、そのことを文学史のみならず、文化史、特に貴族文化・表象文化(庭園、建築、生活様式、自然観、ならびに後世への影響としての映像・記憶等を含む)の観点から明らかにすることにあります。19世紀前半に詩から散文へと移行して形成されたロシア文学は、いわゆる文学(史)研究の立場からすれば、このウサーヂバをほとんどの文学者のバイオグラフィ(誕生し、多くの時間を過ごした)の場、ならびに作品の描写場面としてのみ理解されてきましたが、ウサーヂバが近代ロシア文学の「成立」に与えたインパクトはそのことだけでは説明できません。本研究では、この作家とウサ―ヂバの関係をより「多面的・多角的に」、かつ「構造」として捉えようとするものであり、そのことは本研究の大きな特徴であり、他のウサーヂバ研究には見られない意義を備えていると確信しています。 より具体的に見れば、2020年度の研究の重点は、第一に、特に本国ロシアにおける多面的なウサーヂバ研究の全体像の把握の総括に置かれ、この点はすでにほぼ目的を達したと考えられます(これは、2021年度に報告書の中で発表予定)。第二は、典型的な貴族の家族史を記述する試みも研究協力者によってなされました。さらに、18世紀文学ならびに映画史におけるウサ―ヂバ表象についても、2021年度刊行の報告書の形で発表される予定です。 当初の研究計画では、2020年度が研究の最終年度であったことから、研究全体の総括ならびに追加の現地調査を行う予定でした。しかし、コロナ禍の影響により、図書館を使っての文献調査ならびに代表者・分担者・協力者の現地訪問が実現できず、計画変更を余儀なくされ、結果として、さらに一年間の研究延長を申請し、それが認可されたところです。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、全体として4ヶ年にわたるものとして継続されてきました。しかしながら、上記のとおり、コロナ禍の影響でさらにもう一年の研究継続が必要との判断から延長申請を行い、認可されたところです。 しかしながら、本研究の研究計画に鑑みれば、全体として研究の目的とねらいは、完全とは言えないまでも、当初の予定をほぼ順調に遂行してきたものと評価できます。それは、文学者個人のバイオグラフィそのものと、彼が創作した作品世界の描写との関係性がウサーヂバという文化現象を介在させることによって、より明らかに示す可能性を確信できたことによるためです。 併せて、詩から散文へと急速に展開される近代ロシア文学の形成プロセスが場・空間、さらには時間としてのウサーヂバ文化を介在させることによって、より説得的に説明しうると考えられることも本研究の成果として挙げることが出来ます。
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Strategy for Future Research Activity |
上記したように、本研究の主な目的である文学者個人の人生・生活と作品内の描写との関係性をウサーヂバ表象によって明らかにする点については、理論的・概念的には明らかになったが、今後は、そのことをできるだけ多くの作家と作品を具体例として論証していくことが課題となると考えています。そのことと併せて、このウサーヂバ表象の起点をどこに求めるべきか(もしかすると、文化としてのロシア近代それ自体のルーツにまで遡るかもしれない)についても今後の、近代ロシア文学とウサーヂバ文化とのより深い繋がりという課題へと導かれるとも考えています。
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Causes of Carryover |
2020年度は、計画していた海外調査を含む当初の研究がコロナウイルス感染症拡大により十分に実施できなかったため、補助事業期間延長申請を行い(令和3年2月18日付)、承認されました(令和3年3月19日付)。したがって、2021年度への繰り越しによって、報告書作成のための経費を計上する予定です。
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Research Products
(6 results)