2017 Fiscal Year Research-status Report
後期啓蒙主義における『最新ドイツ文学精選叢書』の学術・書評誌としての意義
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17K02627
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
クラヴィッター アルネ 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90444778)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ドイツ文学 / 啓蒙主義 / 雑誌文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトの目的は、1772年から1780年まで北ドイツで出版されていた文芸学術誌『最新ドイツ文学精選叢書』が盛期啓蒙主義のもっとも重要な雑誌のひとつであったという意義を明らかにするとともに、同誌に匿名で寄稿した作家や学者たちの実名を突き止めることにある。これによって一方ではこれまで曖昧にされていた同誌の文学史上の位置づけや価値づけを明確にすることができる。他方で、掲載されている書評や論文の内容を精査することによって、重要な文学作品(ゲーテ、ヴィーラント、クロップシュトック、ヘルダー、レンツ)の受容史研究に新たなインパクトを与えることができると期待できる。 2017年度はまさしく研究計画どおりに研究を進めることができ満足のいく年だった。特に、『最新ドイツ文学精選叢書』の寄稿者たちの素性を突き止めることに徹底して取り組み、約40人分のペンネームの正体を突き止めることができたのが大きな成果である。7月8月の海外研究出張のあいだに、ベルリン国立図書館、ベルリン文学研究センター、ベルリン自由大学、フンボルト大学図書館などで資料調査に集中的に当たり、後期啓蒙期の複数の雑誌に関して一次文献と最新の研究文献を渉猟することができた。さらに、9年にはベルリン・フンボルト大学で開催された国際学会で同誌のもっとも重要な寄稿者である哲学者にしてオリエント学者ハインリヒ・フリードリヒ・ディーツについての本研究プロジェクトによる最初の研究成果を発表することができた。発表原稿に加筆訂正したものが2019年に刊行される予定の記念論集に発表されることが決まっている。『最新ドイツ文学精選叢書』のために書かれたディーツの論文や書評を集めた著作集の編纂作業を共同研究者と進めている最中で、2018年度中にも出版される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は研究計画どおりに研究が順調に進められた。特に、図書館での徹底した資料調査によって『最新ドイツ文学精選叢書』の寄稿者たちの正体を約40人分突き止めることができたのが大きな成果で、次年度以降の研究の大きな足がかりができた。研究発表もベルリンの国際学会で行い、専門家たちとこのテーマについて十分な意見交換を果たせたばかりではなく、フンボルト大学オリエント学主任との共同研究の強化が果たせ、ディーツ書簡集を共同編纂することが決まった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究プロジェクトの二年目には、主としてベルリン、ハレ、カッセル、デトモルトの大学図書館・資料館で手紙などの資料調査と投稿者たちのさまざまな作品集出版のための準備に集中的に取り組む。 昨年度ベルリンで開催された学会でオリエント学主任の知己を得、彼よりディーツの書簡集を共同で編纂出版しないかと誘われた。同書簡集の編纂作業に2018年度中取り組み、2019年夏までには作業を終えて、2020年に公刊する予定である。さらにの「作品プロフィール」シリーズ(ド・グリュイーター出版)の編集者ギデオン・シュティーニングと共同で、2019年に『最新ドイツ文学精選叢書』のもう一人の重要な寄稿者であるヤーコプ・モビヨンについての国際学会を開催する計画である。2018年9月にはライプチッヒ大学での国際学会「運動における知。啓蒙期の学術雑誌、論争と書店」でこれまでの研究成果を発表する。 さらに「ゲーテ年鑑」「レンツ年鑑」「ヘルダー年鑑」「ヴィーラント研究」「ドイツ文学の社会史のための国際アーカイブ」などの有力な学術雑誌に論文を発表し、新しく発見された書評を専門家たちに紹介するつもりである。これらの論文は「最新ドイツ文学精選叢書」に関するより包括的な研究書を準備するものとなる。
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Causes of Carryover |
2018年度に計画しているドイツへの複数回の渡航費を補填するため。
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Research Products
(4 results)