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2019 Fiscal Year Research-status Report

ドイツ汎愛派の教育改革-「知」の社会的機能と「人間の使命」

Research Project

Project/Area Number 17K02633
Research InstitutionFukuoka University

Principal Investigator

田口 武史  福岡大学, 人文学部, 教授 (70548833)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2021-03-31
Keywords汎愛主義 / グーツムーツ / 体育 / 身体論 / 啓蒙 / オリンピック / ゲルマン / パトリオティズム
Outline of Annual Research Achievements

本研究は18世紀末のドイツにおける教育思想、すなわち教育に関する言説に表れた人間観と社会観を、〈自然志向〉対〈実用志向〉および〈コスモポリタニズム〉対〈パトリオティズム/ナショナリズム〉という2つの対立軸に即して観察しようとするものである。この2つの軸が重なり合う場所に発現した教育思想、近代の抱える矛盾に正面から取り組んだ教育思想が「汎愛主義」であると前提し、その特性を思想面と実践面において分析している。報告年度は汎愛派最後の教育家と称されるJ.Ch.グーツムーツ(1759-1839)に焦点を合わせた研究をおこなった。
グーツムーツはザルツマンの汎愛学院において器械体操や水泳などの身体運動を指導し、これを教科として確立させた人物である。体操の父F.L.ヤーンはグーツムーツの体操教育に着想を得て自身の「テュルネン」を創案したのであるから、グーツムーツこそがドイツにおける体操教育の祖であると言って差し支えないであろう。その業績については--ヤーンに比して随分影は薄いが--体育学の分野における数々の優れた研究において詳しく紹介され、また高く評価されている。
本研究ではしかし、それらの研究成果を踏まえた上で、グーツムーツの主著『青少年の体育』(1793年)を人文学研究の立場から、すなわち、あえてこれまでの体育(史)研究の枠組みからはずし、Volkと古代ゲルマンをめぐる議論、有用性をめぐる議論、共同体と個人をめぐる議論といった、同時代の諸問題の中において再検討した。その結果、古代ギリシア・ローマにおける身体観の賛美、オリンピック精神をドイツで復活させるという企図、ゲルマン・イデオロギーに対するアンビバレントな姿勢、身体美-精神的強さ-有用性の三位一体など、いくつかの注目すべき諸特徴が浮かび上がってきた。それらを「身体の啓蒙と社会化」として定位すべく、口頭発表にまとめた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初、2019年度にはザルツマンの著作及びトラップによるジャーナリズム活動から汎愛派の政治傾向と、特に国民教育に関わる教育方針の絡み合いを探ることを計画していた。しかし本研究の最終目標、すなわち〈自然志向〉と〈実用志向〉の調停から--汎愛主義は、ルソーの教育理念を学校教育において現実化/有効化するという逆説を孕む試みであった--コスモポリタニズムとパトリオティズム/ナショナリズムの混淆が生じたという仮説を証明するには遠回りであると、あるいは恣意的議論になる危険性があると判断されたため、研究対象をグーツムーツの体育教育に変更した。
その結果、上記の最終目標に直接繋がりうる点が、予想を超えて多く見いだされた。また2019年8-9月に行った現地文献調査でも、グーツムーツに関する興味深い資料を入手すると同時に、次の展開への示唆を得ることができた。(当初から研究対象には入れていたものの)グーツムーツおよび体育を研究の中心へとスライドさせたことにより、思いかけず研究の筋がより明確になり、本研究最終年度への見通しがついた。

Strategy for Future Research Activity

2019年度における研究の継続として、グーツムーツの著作『身体と精神の鍛練および休息のための遊戯』(1802)を、「遊戯(Spiel)」を巡る18世紀後半-19世紀前半の議論と照らし合わせつつ考察する。このテーマに関する先行研究では、ロックやルソーの遊戯観、あるいはシラー、ジャン・パウル、フレーベルと引き継がれてゆくロマン主義的遊戯観が注目されてきたが、これにグーツムーツの遊戯観、すなわち(実用性・実務性を重んじ啓蒙主義的志向の強い)学校での授業を想定した、また実際の教育経験に根差す遊戯観を加えて検討することで、「遊戯」という概念に反映された近代的人間像を、より具体的に読み取ってゆきたい。さらに、体操で接続するグーツムーツとヤーンの影響関係および愛国主義で結束するヤーンとフレーベルの思想的連関を、「遊戯」の観点で捉え直すことにより、三者の教育思想を対比的に描き出す。

Causes of Carryover

学務の関係でドイツでの資料調査期間を当初の予定よりも短縮せざるをえなかったため、使用額が予算を大幅に下回った。繰り越される予算は、所属機関に所蔵されていない体育関連および汎愛主義教育関連文献の購入の当てる。また状況が許せば、体操・体育関連資料を集めた国内の大学図書館にて文献調査を行う。

  • Research Products

    (3 results)

All 2019

All Journal Article (2 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] 書評:嶋田洋一郎訳『ヘルダー民謡集』2019

    • Author(s)
      田口武史
    • Journal Title

      九州ドイツ文学

      Volume: 33 Pages: 79-81

  • [Journal Article] 書評:須藤秀平著『視る民、読む民、裁く民』2019

    • Author(s)
      田口武史
    • Journal Title

      図書新聞

      Volume: 3427 Pages: 5

  • [Presentation] J. Ch. F. グーツムーツの身体論2019

    • Author(s)
      田口武史
    • Organizer
      第71回日本独文学会西日本支部学会

URL: 

Published: 2021-01-27  

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