2019 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of the influence relations in Chinese classical popular novel and drama
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17K02634
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
土屋 育子 東北大学, 文学研究科, 教授 (30437800)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中国通俗文学 / 戯曲 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、春秋戦国時代を舞台とする通俗文学作品を対象に行ったものである。 小説と戲曲の違いは形態の違いはもちろん、享受形態も小説が主に読まれることを装幀しているのに対し、戯曲は読まれることも、実演されることも含む。内容的には、同じ題材を用いていても、作品にもよるが、小説がしばしば歴史書の記述に沿った構成を表に打ち出すのとは異なり、戯曲は伝説的な虚構要素をはばかることなく取り入れることで成り立っている。いわばアナザーヒストリーとして、人々の思考の地下水脈を表面化させていると言えよう。 よって、戯曲版本の継承関係を明らかにすることは、整理が十分に行われていない原型からいわば完成体の流布本までの過程をたどることになる。また、もう一つ明らかにすべきであることは、歴史書の記述が物語化、さらに戯曲化にあたって、何が拡大し、何が捨象されたのかについて、分析・考察が必要である。 作品の特色を分析する基礎的な作業として、脈望館抄本「楚昭公」訳注作成を行った。これは『春秋左氏伝』や『史記』などに見える記述に基づく戯曲であるが、歴史書の記述だけでなく、『呉越春秋』『越絶書』など伝説的な要素も多く取り入れることで演劇化されている。ことに本作品では、物語の発端で宝剣伝説、孫武の故事、伍子胥の故事が豊富に盛り込まれており、観客がそれぞれの登場人物について恐らく既知であって、興味をそそる作品とすることに腐心した結果であろうことが推測される。このような作品の特徴をより詳細に明らかにするために、訳注作成という基礎的研究に取り組むことにした次第である。
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Research Products
(5 results)