2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02637
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大木 康 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70185213)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中国 / 書物 / 近世 / 標点符合 / 印刷 / 戯曲 / 小説 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国の古典籍においては、それが刊行された時点では、本文の文字には句点読点などがまったく施されていない、いわゆる白文の状態が大部分であった。ところが、時代が下るにつれて、刊行された時から句点、あるいは固有名詞に傍線を施したりした書物があらわれてくる。印刷本が主流となる中国近世(宋・元・明・清)において、本文に句点その他の読書符号(標点符号)を付した書物の状況を通観し、その起源や、それらが出現する背景をさぐりたいというのが、本研究の目的である。 本年度における研究の実績の一は、各種の影印本叢書を利用することによって、宋代以来の書物(印刷本)における読書符号(標点符号)のあり方の調査を実行し、今後の研究に関わる重要な知見を確信できたことである。すなわち、『四部叢刊』『四庫全書存目叢書』『四庫禁燬書叢刊』『古本戯曲叢刊』『古本小説叢刊』などに収められた書物の標点の状況を調査したところ、経部、史部、子部、また集部の別集、総集などに収められるいわば伝統的な書物においては、刊行当初標点が施された書物はきわめて少ないものの、明代以降に刊行された戯曲、小説などにおいて、刊行当初から標点が施された書物が多く見られるということである。ある程度当初から予想された現象ではあるが、実際の調査により、このことを数字的、実証的に確認することができた。 本年度における研究の実績の二は、論文の発表である。研究代表者の単著である『馮夢龍と明末俗文学』(東京大学東洋文化研究所研究報告、汲古書院、2018)の第八章「馮夢龍の批評形式」においては、明末蘇州の文人馮夢龍が刊行に関わった多くの書物における標点のあり方を調査し、馮夢龍にあっても、戯曲、小説(文言の作品も含む)において、より多くの種類にわたる標点符号が用いられていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度において、『四部叢刊』『四庫全書存目叢書』『四庫禁燬書叢刊』『古本戯曲叢刊』『古本小説叢刊』など各種の影印本叢書を利用することによって、宋代以来の書物(印刷本)における読書符号(標点符号)のあり方の調査を実施した。それによって、経部、史部、子部、また集部の別集、総集などに収められるいわば伝統的な書物においては、刊行当初標点が施された書物はきわめて少ないものの、明代以降に刊行された戯曲、小説などにおいて、刊行当初から標点が施された書物が多く見られることが確認できた。 また、研究代表者の単著である『馮夢龍と明末俗文学』(東京大学東洋文化研究所研究報告、汲古書院、2018)の第八章「馮夢龍の批評形式」を発表し、この研究課題について、一人の文人の刊行した書物における標点符合の傾向について明らかにした。 上記の知見にもとづき、次年度以降は、標点符合の調査を戯曲、小説を重点的に行うこと、一人の作者のみではなく、その範囲をさらに拡大して行くことなどの方針を立てることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目にあたる平成30年度にあっては、上記平成29年度の研究成果をもとに、戯曲、小説の書物における標点のあり方に的をしぼって調査を行うことにしたい。もとより、それら以外の書物についても、標点が施された書物はないわけではないので、依然として、中国近世における書物全体の調査は続行するものの、刊行時点から標点が施された書物の比率が高い戯曲、小説作品をより多く観察することによって、標点の施された書物の調査点数を増やしてゆくことにしたい。 これら数量的データーは、まだ発表していないが、本年度から、論文の形で発表する準備を開始したい。論文としての発表の前に、今年度中に、国内、もしくは海外の研究会において、口頭による発表を行い、諸家の意見をあおぐことにしたいと思う。 資料の収集は、叢書類の購入、写真撮影、図書館での閲覧などにより、引き続き行うことにしたい。
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Causes of Carryover |
海外調査の計画が、次年度にずれ込んでしまったため。また、購入予定の中国刊行の本が、年度中に入手不可能とわかったため。
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Research Products
(5 results)