2017 Fiscal Year Research-status Report
近代中国における「童話」の成立-日本児童文学との交渉を軸に
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17K02643
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
成實 朋子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (40346226)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 近代童話 / 清末民初 / 日中比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
近代中国における童話及び児童文学の実証的な歴史研究を行っている。日中両国における近代童話に関する資料収集を行い、それを基に、日中比較児童文学の観点から、近代中国において、日本から伝わった童話という言葉と概念がどのように中国において受容され、中国において童話という文芸がいかに発展してきたのかということを解明する。 2017年度においては、まずは中国語による近代童話に関する資料収集を行った。資料収集の先としては、中国大陸の上海図書館を選び、2017年9月に同館を訪問し、資料収集を行った。上海は清末民初の頃の中国における出版の中心地であり、上海図書館は中国国内の中でも特に清末民初の頃の書籍の所蔵数が多いためである。 上海図書館では、清末に上海で発行されていた『小孩月報』と『蒙学報』を中心に資料収集を行った。上海図書館では、特にマイクロフイルムで所蔵されている『小孩月報』を多数確認することができ、一部複写することができた。また『蒙学報』も未確認の号を一部確認することができ、清末民初の中国の児童文学の出版事情並びに「童話」という語の解明に役立つ資料が入手できた。 民国期の資料に関しては、台湾の高雄図書館と中国大陸の南京図書館・金陵図書館にも所蔵が多数認められるということで、2018年3月にこれらの図書館にも調査を行った。いずれにおいても、これまで未確認の資料を確認することができたが、殊に高雄市立図書館においては、民国叢書の所蔵が多数認められ、これまで実物を確認することが出来なかった「童話」関連の蔵書を多数確認することができた。特に、民国期において中華書局が出していた世界童話叢書を多数確認できたことは、当該研究を深めていく上で、大いに役立つものである。 持ち帰った資料は多数であるため、学生アルバイトを依頼し、ともに順次整理を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近代中国における童話及び児童文学の実証的な歴史研究を行うにあたっては、当該研究に必要な資料を十全に入手しなければ、正確な分析は行えない。しかしながら、清末民初の児童文学に関する資料は散逸が激しく、日本においては入手の難しい資料が多数認められる。そのため、本年度はまずは中国語圏に存在する童話に関する資料の収集を行うことに尽力した。 2017年9月にまずは上海図書館に赴き、資料収集を行った。上海は清末民国期の出版の中心であり、上海図書館の資料と蔵書内容はこの時期の研究を行うにおいては、まずは確認しなければならないものである。上海図書館での資料収集作業は予定通り順調に行われた。何より『小孩月報』と『蒙学報』の未確認の号を多数確認し、一部複写の上持ち帰ることが出来たのは、大きな収穫であった。 本来は、日本の『よろこびのおとづれ』誌や国立国会図書館所蔵の『蒙学報』を確認する予定であったが、調査を進めていく過程において、台湾の高雄市立図書館や南京図書館に民国期の資料が多数残されているということが判明したため、国内調査に先立ち、これを優先させることにした。 2018年3月に高雄市立図書館と南京図書館にそれぞれ赴き、確認作業をおこなったところ、未確認の資料が多数認められた。いずれにおいても、想定した以上の資料を確認することができたのであるが、特に高雄市立図書館においては、民国期に出版された中華書局の叢書をデジタルではない形で多数確認することができた。これは大きな収穫であり、当該研究をすすめていくのに、大いに役立つものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は中国語圏における童話に関する資料の収集を積極的に行ってきたが、2018年度においても、日中両国における近代童話に関する資料収集は継続して行い、不足を埋めていきたい。収集した資料を基に、日中比較児童文学の観点から、近代における中国童話のあり方の解明につとめていく。 2018年度においては、2017年度に収集した資料をまずは整理した上で、これを基に不足を補い、中国の上海図書館再訪ならびに東京の国立国会図書館等において、更なる資料収集を行う予定である。 また現時点で得られているものを基に積極的に研究発表を行っていく予定である。具体的には、まずは2018年8月17日から8月21日にかけて、中国長沙で開催予定の第14回アジア児童文学大会に参加し、研究発表を行う予定である。当該大会は、東アジア地域で隔年で開かれる国際大会であり、東アジア地域としては、最大規模のものである。日本・中国・台湾・韓国から多数の児童文学研究者が参加し、児童文学に関する討議を行う。同大会に参加し、清末民初の頃に中国に翻訳された日本と韓国の童話についての発表を行い、他地域から参加の先生方の意見をあおぐ予定である。 また、本年11月24日・25日に東京の文教大学で開催予定の日本児童文学学会においても口頭発表を行う予定である。当学会においては、『蒙学報』に載せられた巌谷小波の御伽噺について発表する予定である。これらの大会において発表を行い、他の研究者と意見交流することによって、研究をより深めていきたいと考えている。 発表するにあたり、不足の資料があった場合は、追加調査を行う予定である。長沙での研究発表に相前後して、再び上海図書館を訪れ、追加調査を行い、資料の不足を補いたい。また、昨年度は、東京での調査は実施できなかったが、国会図書館や東洋文庫に赴き、調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は海外での調査を積極的に行ったが、航空券等旅費が予定額と違った為、若干の差が出た。航空券の選択においては、出来る限り経済的なものを選び、資金をより有意義に用いることにつとめた。2018年度の使用においても、引き続き、より経済的で有意義な使用につとめたい。
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Research Products
(1 results)