2018 Fiscal Year Research-status Report
近代中国における「童話」の成立-日本児童文学との交渉を軸に
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17K02643
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
成實 朋子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (40346226)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 民国時期中国童話 / 明治期日本童話 / 巌谷小波「新伊蘇普物語」 / 『小孩月報』 / 清末『蒙学報』誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は清末民初から民国期にかけての中国の童話、明治期の日本童話についての研究調査を前年に引き続き継続して行うとともに、成果の発表につとめた。 調査研究としては、上海図書館(8月)・日本近代文学館(12月)・北京国家図書館(3月)・台湾台東大学(3月)・高雄市立図書館(3月)等を訪問し、それぞれの館に所蔵する資料を調査し、必要に応じて収集を行った。上海図書館においては、主に『小孩月報』のマイクロフィルムの資料を確認することができた。これまで不明であった同誌の書誌情報並びに出版状況について、詳細な情報を入手することができた。北京国家図書館においては、『児童世界』の中から、入手していないものを確認することができた。台湾の台東大学においては、児童文学研究所の游珮芸所長の案内により、台東大学図書館が所蔵している資料を確認することができた。また台湾においては、高雄市立図書館所蔵の民国書籍を確認することができた。 成果の発表という点においては、2018年8月に中国の長沙で行われたアジア児童文学大会に参加し、「民国時期中国における日本童話と朝鮮童話の翻訳紹介について」と題する研究発表を行った。この発表論文は『童年書写的想像与未来』(湖南少年児童出版社、2018年8月)に所収され、中国で出版された。 日本国内における成果の発表としては、日本児童文学学会第57 回研究大会(文教大学・越谷キャンパス)において「清末『蒙学報』誌における日本児童文学の翻訳―巌谷小波「新伊蘇普物語」を中心に」と題する研究発表を行った。 また、民国期中国に関する書籍の購入を行った。本来は中国で出版された書籍の購入も行う予定であったが、納品時期の問題もあったので、そちらは個人研究費で購入することとし、科研費としては、日本国内で出版されたものを中心に購入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題はおおむね予定された通りに順調に研究活動が進められている。しかし計画とは違う点も生じている。 計画と違う点としては、まずはアジア児童文学大会参加に関わる経費がある。本来はアジア児童文学大会参加のための論文翻訳費を計上していたのだが、予定していた翻訳者が体調を崩し、申し込み締め切りに間に合わなくなったので、翻訳を外注することが出来ず、自分で行わざるを得なかった。そこで本来予定されていた翻訳費は計上されないことになった。また本来はアジア児童文学大会は参加費を必要としていたので、参加費を計上していたが、今回は日本からの参加者の副代表の立場で参加することとなってしまった。すると、運営側からアジア児童文学大会開催に関連する役職者からは徴収しないことになったとの連絡があり、これも計上されないこととなった。 他に複写費も計上していたが、コピー代が無料となっている所も多く、額としては小額で済んだため、予定の金額は使わなかった。 以上の状況により、2019年度に予定していた調査を前倒しで行うことにし、北京の国家図書館・台湾台東図書館等への調査研究を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況に書いたように、研究活動が順調に進んでいるため、本来2019年度に予定していた調査の一部は既に2018年度に行うことができた。しかし調査が進むにつれて、改めて上海図書館所蔵の資料を確認する必要が生じた。そこで本年度においては、上海図書館での追加調査を8月から9月に実施する予定である。前年度までに確認できなかった資料収集を改めて行っていきたい。また、国立国会図書館・東洋文庫・大阪大学等所蔵の資料の調査を引き続き行う予定である。 昨年度は研究成果を一部発表することができたが、本年度も研究成果の発表につとめる予定である。研究発表としては、11月に東京で開催予定の日本児童文学学会において、研究成果の一部を発表する予定である。また、研究成果を論文として発表していきたい。本務校の紀要或いは大阪教育大学国語教育学会が出している『国語と教育』等の媒体に論文を発表していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は主に翻訳にまつわる人件費が発生しなかったことと、アジア児童文学大会参加費が発生しなかったことによる。人件費に関しては、本来は国際学会に発表する論文を中国語と韓国語に翻訳してもらう予定であり、人材も探してあったが、予定していた翻訳者が体調を崩してしまったため、時間的に間に合わなくなったので、自分で外国語で執筆を行った。そのため予定されていた経費が発生しなかった。 本年度は引き続き国内外での調査研究を行う予定であるが、ここまで集めた資料も多く、これらを整理する必要が生じている。そこで次年度使用額については、主に資料整理のための人件費として使いたい。
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Research Products
(3 results)