2018 Fiscal Year Research-status Report
20世紀中国の文学形式と抒情の定型―ジャンル・言語・地域の越境面から見る
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17K02647
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
津守 陽 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (20609838)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 東アジア / 文体のポリティクス / 抒情の形式 / 他者表象 / ナショナリズム / 野蛮と文明 / ジェンダー / 地方と中央 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は以下の面において研究を行った。 (1)定例研究会の開催:前年度の計画に基づき、2019年3月29日~30日の二日間、琉球大学にて代表者および連携研究者2名が集まり、他に日・中・韓の研究者3名を招いて、国際学術ワークショップ「20世紀東アジアにおける帝国と文学」を開いた。東アジアの近代化段階から戦後に至る長いスパンの中で「帝国主義」と文学がどう関わったのかについて、各自の関心から報告と研究交流を行った。また、平成31年度を予定している北九州でのワークショップについて打ち合わせを行った。 (2)国内外の学会における口頭発表と論文発表:今年度は文学作品を書く行為やそれが取りうる形式と、その背後にあるナショナリズム・民族主義・帝国主義・ジェンダーとの関連について、計3回の口頭発表と2本の論文公刊を行った。口頭発表としては、2018年7月に愛知大学のワークショップ「グローバルな視野とローカルの思考ー中国近代の知識経験及び文学をめぐって」(代表者および連携研究者の2名が参加)、および同月京都大学中国文学会において、近代中国の「自然」や「野蛮」をめぐる表象とそのポリティクスについて報告した。また上記(1)の琉球大学ワークショップにおいて、民国期において「地方」の「民衆」が表象されるという行為がどういう思潮の元に行われたのかを整理し、「他者表象」の観点からあらためて「散文」ジャンルの中の「民衆」の表象を考察した。愛知大学と京都大学での発表は2019年3月に論文「「高貴なる野性」の発見ー近代中国の「野蛮」言説から沈従文を見る」として公刊し、また昨年度の脱稿後刊行が遅れていた沈従文の詩論に関する論考「「傍観者」の詩論ー沈従文の評論から新文学の「詩化/散文化」を考える」も2018年12月に研究会論集の一部として発行された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
共同研究のスタートアップとしての研究活動は、年一回のワークショップ主催および関連する国内外の学会への共同参加の形で順調に立ち上がっている。一方で、代表者個人の研究としては、長年テーマとしてきた沈従文と近代中国の郷土文学に関する研究が総まとめの段階に入り、本課題と密接な重なりを持つとはいえ、総まとめとしての執筆作業に研究時間の多くが割かれるようになったため、当初計画していた戦中以後の詩学・抒情性に関する資料収集および分析の面で研究に遅れが見られる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.北九州市立大学にてミニシンポジウムを開催:連携研究者鳥谷の主催により、北九州市立大学にてミニシンポジウムを開催、研究協力者の2名および海外の研究者を招聘する。各人は前年度の研究成果を論文として報告する。 2.書籍購入および資料収集:代表者は東アジア全域のジェンダーおよびナショナリズムに関する図書を新規購入する。またアメリカのコロンビア大学および米国国立公文書館に所蔵されている、日中戦争時期から戦後にかけての音声資料の調査に着手する。 3.論文執筆:代表者は民国時期における人物・風景描写の文体と抒情性を考える上で、エッセイおよびルポルタージュのジャンル特性に着目し、ジェンダー・ナショナリズム・他者表象の観点から研究成果としてまとめる。 4. 論文集の刊行取りまとめ:代表者の勤務する神戸市外国語大学の紀要『外国学研究』(平成 31 年度号)において、これまでの各人の論考を選んで特集号として刊行する。
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Causes of Carryover |
今年度はほぼ予定通りの支出であったが、初年度の残額が多かったことと、研究にやや遅れが生じており、米国での資料収集のための支出が生じなかったことが原因である。残額は次年度の資料購入費および旅費として支出予定である。
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Research Products
(7 results)