2019 Fiscal Year Annual Research Report
Study on connection and break off of the culture in the North-East China at the point of colonization
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17K02650
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
平石 淑子 日本女子大学, 文学部, 教授 (90307132)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 植民地化以前 / 文化の連続性 / 文化の断絶 |
Outline of Annual Research Achievements |
植民地を考えるためには植民地化以前を知り、その以前と以後の比較において変容の情況を知る必要があるという、報告者の従来の主張に基づき、3年間にわたって研究を行った。 当初は『盛京時報』を中心とした中国東北発行の新聞掲載の「新詩」から当地の人々の心情とその変化を知ろうと試みたが、作者を特定できないという大きな問題があった。そこで、東北関係の文学史や文学史家が多く言及する、清末の「吉林三傑(宋小濂、成多禄、徐ダイ霖)」に注目することとした。 三名はいずれも吉林出身で、各々作品集があり、経歴も明らかである。さらに互いに交流し、複数の詩社において中国本土の詩人たちとも交遊が見られる。中でも宋小濂は清朝と民国にまたがり、東北地方で役人として活躍しており、東北の風物を題材とする詩を多く残している。彼は植民地化以前に没しているが、清から民国へという変化の中で、故郷である東北の風物が変化していく様をある種寂寞の中で歌っており、社会の大きな変動の中で人々がどのような感慨を持ったかということに関する貴重な示唆を得ることができた。 最終年度は、その成果を基に、東北の植民地化に深く関わった日本人が当地をどのように捉えていたか、またそれが植民地化に向かってどのように変化していったかを観察、考察した。そこから、日本人の中に従来あった中国への憧れが、実は主として唐代の中国に対するそれであること、日清・日露両戦役の後、自由な行き来の中で初めて知ることとなった中国の現実との大きなギャップの中で、人々の心情が変化していった過程を見ることができた。最終年度に行った二つの学会発表は、その研究の成果を示すものである。いずれも今後学会誌などに発表する予定であり、また2020年度より開始する次の研究課題「清末民初の中国東北地方の文化形成における異文化接触の様相とその影響」につなげていきたいと考えている。
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