2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K02651
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小川 利康 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (70233418)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長堀 祐造 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (40208046)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 陳独秀 / 周作人 / 新青年 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、予定通り日記書簡を中心とする文献調査を行った。 長堀祐造は三巻本の『陳独秀文集』を無事にすべて翻訳を完了させて、完結できたこと、その完結を記念する形で「東アジア中文文学国際学術シンポジウム」でも陳独秀セッションを開催できた。このシンポジウムは隔年で香港、台湾、韓国、日本などで開催しているもので、各国を代表する中国語圏の文学研究者が集まる学会であり、近代文学の起点となった陳独秀の話題に大きな反響を呼んだ。長堀はこのほかにも研究業績一覧の通り、多数のシンポジウムに招かれて講演を行い、文学革命だけでなく、中国共産党創設者として、トロッキストとして、様々な角度からの議論を行い、注目を集めた。これまで陳独秀に関しては信頼できる翻訳が少なかったが、今回の翻訳を通じた研究によって、歴史、思想、文学などさまざまな分野からの学際的研究が可能になるだろう。 小川利康は、周作人が「新しき村」運動に対する関心のあり方を再検討し、周作人日記や書簡を改めて読み直すことを通じて、日本留学時代からの白樺派への関心とは異なる要因が介在していることを証明し、それがロシア革命であったことを武漢大学で開催された国際シンポジウムで発表した。また、北京第二外国語大学では周作人の言語観念を分析するため、一九二〇年代の白話詩から一九三〇年代の文言による雑詩までの変遷を論じた論文を発表した。なお、資料調査方面に関しては、北京中国現代文学館に出張し、周吉宜氏所蔵の故安藤更生(美術史、早大教授)が周作人宛に送った書簡を閲覧および撮影を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二〇一七年は予定していた調査活動が出来たと考える。長堀祐造は『陳独秀文集』(平凡社、東洋文庫)の翻訳作業を通じて、陳独秀関連の資料の調査を行った。小川利康は『周作人日記』、『銭玄同日記』の整理校訂を進めたほか、北京に出張して、周吉宜氏所蔵の安藤更生(個人、早大教授)が周作人宛に送った書簡を閲覧および撮影を行った。以上、調査研究と並行して、第十二回東アジア中文文学国際学術シンポジウムの準備を進め、同シンポジウムでは文学革命百周年を記念して、陳独秀セッションを設け、清華大学教授王中忱氏(当日家族の病気で欠席)、京都大学教授江田憲治氏、長堀祐造が論文発表をを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究の進捗を踏まえ、一年前倒しして、二〇一八年度に周作人国際学術シンポジウムを日本で開催することに決定した。これは参加が予定される関係者のスケジュールと日本国内で宿泊費が高騰しつつある状況を踏まえたものである。シンポジウムに参加される研究者は中国が中心だが、日本、イギリスからも招聘しており、内外で初めての開催となるだけに、研究者からの期待も高く、質の高い議論が出来るであろう。今回のシンポジウム開催により、周作人研究の人的なネットワークは飛躍的拡大できると期待される。
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