2017 Fiscal Year Research-status Report
清朝康乾年間における杭州詩人集団の詩会活動と地方文献編纂に関する研究
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17K02653
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| Research Institution | Fukuyama Heisei University |
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Principal Investigator |
市瀬 信子 福山平成大学, 経営学部, 教授 (50176294)
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2017-04-01 – 2020-03-31
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| Keywords | 中国文学 / 清代 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、清代始めに地方詩会の記録がどのようなものであったかをみるために、まず宋末元初の月泉吟社の記録の変遷を調査した。明代にも詩集はあったが、それについて言及する文献は少ない。清初に王士禛が『静志居詩話』などで月泉吟社を取りあげ、それ以後清代には多くの文献に記載が見られるようになった。月泉吟社について詳細に記したものの代表は厲鶚『宋詩紀事』である。『宋詩紀事』はそれまでの選詩集とは方針を異にし、無名の人、詩句のみの詩人まで収録する。月泉吟社についても、本名ではない人名、詩句、詩会の開催方法まで記録している。これは歴史に残すと意識の強さに起因すると思われる。これらを元に、清代『宋詩紀事』までの月泉吟社の記録の変遷を明らかにした。ただ明代の記録でまだ調査不足の点があり、次年度この部分を補って学術雑誌に発表予定である。
また月泉吟社調査の過程で、『宋詩紀事』が詩会の記録について非常に重要な作品であることに注目し、調査研究に取り組んだ。そして『宋詩紀事』編纂に携わった杭州詩人によって開催された『西湖修禊詩』に焦点を当て、詩会の記録と地方の関連を調べることとした。
『西湖修禊詩』は、杭州地方誌の一環である『武林掌故叢編』、『国朝杭郡詩輯』等の地方文献の中に採録されている。そこで、地方詩会を意識し、しかも当初から記録に残すことを目的とした詩会の詩集として『西湖修禊詩』をとりあげ、分析を進めた。そして、当時の杭州が政府に危険視されていたこと、唱酬という行為自体も警戒されていたことなどの背景の中で、無位無官の詩人たちの記録を残す努力がどのように行われたかに迫った。更に地方誌に掲載される際には、元の詩集の形から、より地方色が強くでる形に書き換えられていることに言及した。更に揚州修禊との比較に基づき、杭州の修禊の特徴を明らかにした。成果は、学会で発表し、また論文２本という形で発表した。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
月泉吟社の記録資料を調べるために、国内外での文献調査を行い、また複写資料を取り寄せて、資料を整えた。この点は予定通りである。明代の資料について不足部分が生じたため、次年度その資料を補った上で、学術雑誌に発表することとした。論文発表が次年度に持ち越しとなったが、元末から、乾隆時代の厲鶚の記録にいたるまでの、月泉吟社の記録の流れについては、明らかにすることができており、清代地方文献への採録の仕方の調査も済んでいるため、ほぼ順調に研究は進捗していると言える。
当初の予定では、次に天津詩壇における杭州詩人が参加した詩会の記録を調査する予定であったが、月泉吟社研究の過程で、詩会の記録を多く残した杭州詩人厲鶚の『宋詩紀事』の重要性に注目することとなった。『宋詩紀事』は杭州詩人が協力して作成している。そこで、最終年度に行う予定であった杭州詩壇における詩会の記録と地方誌との関連に関する研究を、本年度先に行うこととした。その上で、最終的には揚州や天津の記録と比較して、各地の地方誌の記録を比較した方が、各地での杭州詩人の記録の特徴を鮮明にできると考えたためである。最終年度に行う予定であった研究を先に調査することになったのは、当初予定と異なるが、結果的には各地方の記録の比較がしやすくなったと考えられる。
又『宋詩紀事』と同時期の杭州詩会の記録である『西湖修禊詩』に注目した結果、杭州詩会の新たな姿が見えたのは予想を超えた収穫であった。つまり作品集の特徴、時代背景、編修の意図などを検討した結果、浙江に対する弾圧という時代背景と深く関係する形でこの詩集が編纂されたことが明らかになったことである。こうした背景を踏まえつつ、杭州詩人の足跡を各地の詩会で確認し、その記録が各地方文献にどのように記録されたかを調査するという方針にそって研究を進めるという計画については、予定通り順調に研究が進んでいる。
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| Strategy for Future Research Activity |
今年度は、まず月泉吟社の記録についての資料の不足部分を埋めるために、国内外の図書館、研究所で資料を収集する。また月泉吟社に関しては、日本にはほとんど研究論文がないため、中国から取り寄せることとする。月泉吟社の清朝における記録の変遷に加え、地方誌にいかなる形で収録されてきたかという点にも踏み込んで検討する。その後学術雑誌に論文として発表することとする。
また、昨年度杭州詩壇による「西湖修禊」について検討した際に、比較検討の対象とした揚州の「紅橋修禊」を含めた詩会とその記録について研究を進める。そのために、揚州の地方誌、地方選詩集、また金石志などを調査し、詩会の詩が採録されている様子を調査する。修禊については、王士禛、孔尚任、盧見曾の紅橋修禊がどのように揚州の記録に残されているかを『広陵詩事』を始めとする揚州関係文献を元に調査する。そして記録の方法、内容、詩人などについて、杭州詩壇の『西湖修禊詩』と比較する。さらに、修禊に参加した杭州詩人に焦点をあて、客人としてどのような位置づけで詩会に参加していたかをできる限り明らかにする。
次に揚州詩壇の詩会の記録である『韓江雅集』の内容を調査し、地方に関わる詩題のものについて、それらの詩の内容を分析し、地方文献と文学との関連を考察する。更にこの詩集に採録された詩が、後の地方文献の中にどのように採録されているかを調査する。調査に際しては、「紅橋修禊」と同じ文献を利用し、詩会の記録と、その中に見られる杭州詩人の詩に関する資料収集を行い、杭州詩人の活躍がいかなるものかを明らかにしてゆく。
上記研究を進めるために、前年度に加え、更に関係書籍を購入し、調査の資料を整える。また、文献調査については、国内の研究所・大学、中国の図書館・大学などに直接調査に赴く。また関連の電子資料を集めて分析の助けとする。成果は、学会で発表し、論文にまとめる。
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| Causes of Carryover |
プリンタを購入予定であったが、製品が予定より高額となってしまったことと、テーマに沿った書籍購入とデータベース購入に費やす分が増えたため、プリンタ購入を次年度に回した。その結果プリンタ用に請求していた資金の一部を次年度使用額として回すこととなった。
次年度使用額分は、新年度に価格が下がったプリンタを購入する。また今年度のテーマである月泉吟社研究用の関係図書を購入するために清代関係図書を購入して資料を整える。それらのために物品費を使用する。他に電子データベースを購入し、調査の助けとする。更にCNKIカードを購入して中国で刊行された論文資料を揃える。またそれ以外の論文については、レファランスを利用して取り寄せるため、通信費を利用する。
また文献資料の調査に国内の図書館、更に中国及び台湾の図書館・研究所に赴く。その際に複写費を用いる。更に研究発表のために出張する。調査と研究発表のために旅費を用いる。
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