2017 Fiscal Year Research-status Report
18-19世紀文学におけるエンブレムの受容と変容に関する横断的研究
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17K02655
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
出羽 尚 宇都宮大学, 国際学部, 講師 (00434069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 三郎 日本大学, 芸術学部, 教授 (00130477)
植月 恵一郎 日本大学, 芸術学部, 教授 (10213373)
松田 美作子 成城大学, 文芸学部, 准教授 (10407611)
時田 郁子 成城大学, 文芸学部, 専任講師 (60757657)
伊藤 博明 専修大学, 文学部, 教授 (70184679)
山本 真司 天理大学, 国際学部, 准教授 (80434976)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エンブレム / ジェームズ・トムソン / アレグザンダー・ポウプ / エドマンド・スペンサー / クォールズ / シェイクスピア / ヴィーリクス / ハインリッヒ・フォン・クライスト |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実績は、代表者の出羽、分担者の山本、松田が、7月にフランスのナンシーで開催された国際エンブレム学会に参加し、各国のエンブレム研究者との意見交換や情報収集などを行った点がまずある。また、各研究者の研究については、出羽はジェームズ・トムソンの教訓的主題とエンブレムの関係についての調査をする過程で、アレグザンダー・ポウプ、およびエドマンド・スペンサーの文学作品とエンブレムの関係にも注目するようになり、それらの挿絵、テクストの収集を行った。植月はクォールズとハーヴィーの〈心臓〉のイメージ、さらに形而上詩詩人、ダン、ハーバート、ヴォーン、クラショーの〈心臓〉のイメージ解析を行い、いずれもカトリック、アングリカンなどキリスト教の教義を色濃く反映したエンブレムになっていることが明らかとなった。松田は、19世紀英国のエンブレム復興運動に注目し、シェイクスピアの挿絵本を中心に考察を進めた。伊藤は18世紀フランス文学の扉絵の分析と、ヴィーリクス『愛するイエスの聖なる心』の解読を行った。時田はクライストの短編『拾い子』における活人画的な要素を考察し、バロック小説『阿呆物語』の図像と作品内容の連関を明らかにした。木村は、18世紀フランスを代表するエンブレム作家の版画家グラヴロの作品として、ルソー『新エロイーズ』の挿し絵(1760-61年)として使用されているものを対象に、フランス文学における、テキストと版画との関係を調査研究した。山本はシェーネやデイリーの先行研究を踏まえ、 主にシェイクスピアのロマンス劇の改作上演を扱って再考するために必要な文献を購入し、考察を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際学会への参加のほか、各研究者が設定した課題に基づいた研究を進め、その一部を研究報告、論文発表等の成果によって公開したことで、一定の進捗をしたといえる。ほかに、松田は成城大学図書館における「ヴィクトリア朝の挿絵本―Shakespeare in Graphic Art」展示を6月と10月に行い、ボイデルの『シェイクスピア・ギャラリー』他について解説文をまとめた。とくにAnna Jameson著Shakespeare’s Heroines(1905)に描かれたヒロイン像とその挿絵との相関は、エンブレム的であることを指摘した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画において設定したように、各研究者が研究を遂行する。 出羽は、トムソンのほか、前年度に研究を開始したポウプとスペンサーの作品におけるエンブレムとの関係についても、挿絵の分析とテクストの分析から考察を行い、7月には口頭発表、また、論文発表を予定している。また、植月は、ロマン派詩人ブレイクや英国18世紀児童書とエンブレムの関係、山本は、シェイクスピア演劇へのエンブレムの影響について、松田は、女性初の美術評論家でもあるAnna Jamesonについて、昨年度に続いて今後さらに研究を進めていく予定である。、時田は、ゲーテ文学における造園モティーフについて、木村は、小説家で百科全書執筆者のディドロの美術批評におけるフランス・イタリアのエンブレムの教養について、そして伊藤は、18世紀のマンゾーニの作品に見られるエンブレム的要素について、主題とし研究を行う。
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Causes of Carryover |
木村は、本年度は、版画家グラヴロの作品について調査を行ったが、フランス文学における、テキストと版画との関係を調査研究し、海外出張による作品分析は次年度に延期する。
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Research Products
(13 results)