2017 Fiscal Year Research-status Report
前近代文学者たちの近代―明治・大正・昭和期における伝記と肖像の継承と変容
Project/Area Number |
17K02656
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永井 久美子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (10647994)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肖像 / 絵巻 / 文学者 / 紫式部 / 近現代 / 古典受容 / 映画 |
Outline of Annual Research Achievements |
上代から近世までの代表的文学者の人物伝と肖像を横断的に分析し、近代以後、古典文学とその作者の人物像がどのように伝わり、広まったかを追う研究課題のうち、平成29年度は、紫式部、清少納言、紀貫之を中心とする平安時代の文学者について主に研究を進めた。調査結果のうち、紫式部については研究発表と論文の刊行を済ませており、他の人物についても研究成果をまとめつつある。 紫式部の肖像画の近代以後の変遷をめぐる研究の成果は、鹿島美術財団における研究発表会と、韓国で開催された学術交流シンポジウムで公表した。前者は、鹿島美術財団による平成27年度「美術に関する調査研究の助成」を受けた研究テーマ「紫式部の近代表象――古典文学の受容と作者像の流布に関する一考察」に主に基づく報告であったが、助成期間満了後に同財団より優秀者表彰を受け、特に近世における言説の継承のあり方について、科学研究費助成事業によるその後の調査結果を補足する形で発表を行った。また、韓国における発表では、主に明治以後の教育書における紫式部像について調査を進めた結果を報告し、韓国外国語大学校日本文化研究所が刊行する『日本研究』第75号に論文を発表した。 平成29年度は、他にも海外、特に韓国の日本文学研究者と交流の機会を持つことができ、仁川大学校日本文化研究所が主催する国際シンポジウムに参加し、サブカルチャーにおける日本古典文学受容について検討した。具体的な論点は、映画『シン・ゴジラ』に認められる記紀神話モティーフの応用であり、現在、論考を執筆中である。 このほか、平安末期の絵巻物である「病草紙」の共同研究の成果を、共著の出版を通して公表した。文献目録の作成、文献解題の執筆を担当し、研究史をたどることを通して、同絵巻の近現代における受容についても考察する機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた研究発表と論文の刊行は、年度内に実施することができた。加えて、韓国・仁川大学校からの招聘の機会を得て、現代映画にも研究の視野を広げることができた。既刊論文で言及した内容以外の調査結果は、平成30年度中には活字化する予定であり、「病草紙」をめぐる論考は、すでに脱稿している。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時には、平成30年度は、万葉歌人の研究を中心的に進める計画を立てていた。予定していた調査は開始しているが、一方で、小川剛生「卜部兼好伝批判――「兼好法師」から「吉田兼好」へ」(『国語国文学研究』第49号、平成26年3月)、同『兼好法師――徒然草に記されなかった真実』(中公新書、平成29年)の刊行を承け、平成31年度の計画として申請していた中世の文学者をめぐる研究の遂行を早めたいと検討している。
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Causes of Carryover |
ノートPCの購入を希望していたが、見積額が年度内残額をやや上回ったため、次年度に予算を繰り越したうえで、2018年4月にマシンを購入した。
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[Book] 『病草紙』2017
Author(s)
加須屋誠・山本聡美編
Total Pages
259
Publisher
中央公論美術出版
ISBN
9784805507704