2019 Fiscal Year Research-status Report
女性教育者とそのTransnational Networkに関する比較文学的研究
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17K02661
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Research Institution | Tokyo Seitoku University |
Principal Investigator |
小橋 玲治 東京成徳大学, 人文学部, 助教 (60756435)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 順光 大阪大学, 文学研究科, 教授 (80334613)
堀内 真由美 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (60449832)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 安井てつ / 野口幽香 / E. P. Hughes / シャストリ(H. P. Shastri) / 海洋文学 / 船上のロマンス / ウィンドラッシュ世代 / フィリス・オーフリー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者・小橋は、二度の口頭発表と、二本の論文を執筆した。これまで安井てつの評伝でも明らかになっていなかったイギリス留学中のウェールズにおける足跡を、現地新聞記事から掘り起こした。また、E.P.Hughesが来日中に日本人女性たちに登山を推奨する講演を行った後、日本でも現実に登山を行う女性たちが現れ、その中の一人に講演の通訳を務めた安井の友人である野口幽香がいたことに鑑み、彼女が岩手山に登った際の紀行文の分析を行った。 研究分担者の橋本は、二つの国際学会での発表及び三本の論文を執筆した。1920年代から30年代にかけて、H.P.Shastriが神智学やアジア主義の団体を隠れ蓑にしながら、Smedleyなど上海の共産主義者やアジア主義者に対する諜報活動報告を、英国政府だけでなく日本政府にも提供していた詳細について論文化した。また近代日本で海洋文学が振興され移入されたにもかかわらず、トリスタンとイゾルデ以来の船上のロマンスが欠如している特徴を指摘し、作家W.D.Howellsや画家のTissotの例と有島武郎の『或る女』や谷崎潤一郎の「秘密」などを比較し、伊藤永之介の『南米航路』(1957)頃からようやく登場することを英語論文にした。 研究分担者の堀内は、学会報告と査読論文発表の、それぞれ1件ずつの活動を行った。報告では、戦後イギリス経済を底辺から支えた「ウィンドラッシュ世代」と呼ばれる西インド労働移民で、その後、故郷カリブ海の島々に永住帰国した‘Returnees’のうち、ドミニカ島で知己を得た一人のライフヒストリーを取り上げ、「未完の脱植民地化」の現実の一断面を紹介した。論文では、1950年代末から白人たちの暴力に晒された「ウィンドラッシュ世代」の子どもたちにあたる、イギリス生まれの「ブラック・イングリッシュ」の女性運動を、その全体像と運動の理念、また「ブラック」の定義を中心に紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
代表者である小橋は二度の学会発表、二本の論文執筆と、個人の活動自体は充実し、分担者二人としても同様であるが、代表者が二年連続の異動となって前年度までと身分が変動し、全員が集まる機会を得られなかった。研究代表者として遠隔での三者の研究進捗状況の把握や、情報共有を可能なかぎり密にするよう心がけ、それを実行してきた。
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Strategy for Future Research Activity |
期間延長したことでさらに個々人がそれぞれの領域で自身の研究を行っていく。最終的には三人を中心とした報告会を開催する予定だが、現状では実際に集う場を設けることが難しいかもしれず、その際はオンラインでのライブ配信を含んだWeb上での開催を考えている。
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Causes of Carryover |
研究代表者は研究初年度は大阪大学、二年目は籍自体は大阪大学にあるものの主な仕事は広島大学、最終年度は現勤務校である東京成徳大学と、科研費を受託していた三年間で毎年研究場所が変更となっており、なかなか研究に集中できる環境になかった。それでも代表者自身は海外発表2回、国内学会発表2回、論文4本を執筆し、研究分担者も個々人でその期間中に成果を出してはいたが、そのような状況であったため、研究分担者との共同研究という意味では連携が取れにくい状況であった。補助事業の目的をより精緻にするため、もう一年の延長を行うものの、今年度は移動を伴う研究は難しい状況にあるため、各人の関連書籍の購入や複写費等に充て、最終的な報告会の準備を行っていく。
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Research Products
(12 results)