2017 Fiscal Year Research-status Report
日本語名詞節の内部構造と、主節に対する機能に関する研究
Project/Area Number |
17K02674
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
橋本 修 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (30250997)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 朋世 千葉大学, 教育学部, 教授 (00341967)
大島 資生 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (30213705)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 名詞句 / 名詞節 / 複文 / 従属節 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代日本語名詞節の一つであるトキ節の述部ル/タ形について、絶対テンス説・相対テンス説・併存説を検討した結果、上記三者の中では変存説が相対的に記述的妥当性を持つこと、また、併存説においても一部不十分さが残り、さらに第3の基準時の存在が示唆されることを明らかにした。また、経験構文の一部を担うコト節と、その誤用・方言形であるとされるトキ節の分布についてコーパスにおける分布を検討し、コト節による経験構文は2種あり、トキ節による経験構文はその片方にのみ対応するもので、誤用等とは言えないタイプのものがあることを明らかにした。さらに上記経験構文の2種の類型を存在構文の下位類として位置づけることにより、テンス・アスペクトを存在構文であらわすことの意味づけについて示唆を得た。 現代日本語連体修飾説の時解釈について、テンス構成要素として観察時・認識時の存在を認めるかどうかという論点について検討し、その導入を同時性・認知の連続性の含意を前提にするのが理論的メリットが大きいことを論じた。 古典日本語の名詞節について、realis/irrealisの区別を担う形式の対立が、複文構文全体の意味によって異なること、具体的には絶対存在文・所有文においてはrealis/irrealisの形態的区別が義務的ではないのに対し、それ以外の存在文(場所存在文等)においてはほぼ義務的である、ということを、上代・中古資料の調査・分析により明らかにした。また、上代、中古の連体修飾節内の形容詞において時解釈に関し現代語とは異なる振る舞いを見せる、具体的にはある種の動態性(変化の内在)を認めざるを得ない特殊なケースがあることを見いだした。 隣接する国語教育領域との学際的論点として、名詞修飾を受ける名詞の語彙的性質について主として抽象名詞の意味・統語的性質を調査・記述した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ入力、バグ除去等については、適切な入力者(アルバイタ)が得られない等の問題が生じたが、既存のコーパスの利用と代表者・分担者の直接作業で補い、成果としての知見については概ね予定通りの実績が得られている。2017年度中に得られた成果については、雑誌論文1件、学会発表1件、国際学術シンポジウム招待講演1件において発表を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
データ入力、バグ除去等について、適切な入力者(アルバイタ)を確保する努力を、広報の範囲を広げるなどして行う予定である。 研究内容上の論点としては、いわゆる「認識時」の扱いについて進展が見られたため、従属節テンスの扱い、特に基準時が時間幅を持つための条件についての検討を進め、展開によってはテンスアスペクト全体のモデル変更も検討する。 それ以外の推進については計画通りに、現代語コーパスにおけるタイプ分け名詞節の調査、古典語コーパスにおける中古共時態調査、現代語連体修飾に関する理論的検討を中心に行う予定である。2018年度は少なくとも国内1件(全国大学国語教育学会)、海外2件(韓国日本言語文化学会国際学術大会、漢日対比言語学会)の発表を行い、順次論文も執筆していく(2018年5月時点で既に1篇執筆依頼がある他、投稿を1篇予定している)。
|
Research Products
(3 results)