2017 Fiscal Year Research-status Report
A Cognitive-Pragmatic Study of the Complex Procedures Encoded by the Multiple Occurrence of Discourse Markers and Fillers and Dialogue Construction
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17K02683
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大津 隆広 九州大学, 言語文化研究院, 教授 (90253525)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 談話標識 / フィラー / 組み合わせ / 複合的手続的制約 / 関連性理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英語の談話標識とフィラーの組合せが符号化する複合的手続き的制約を言語コーパスを用いて例証するものである。BNCとWordbanks、およびSanta Barbara Corpus of Spoken American Englishにおける2語からなる組合せの言語データを調べてみると、第一次談話標識は発話解釈の方向性を決め、第二次談話標識とフィラーはその方向性の調整を行うことがわかった。加えて、「一次的談話標識+フィラー」、「フィラー+フィラー」という共起順序は聞き手の推論への誘導、発話態度の緩和、思考の忠実な表現といったコミュニケーションにおける優先事項と深く関わっている。複合的手続き的制約は大きく分けて2つのタイプが観察される。1つは、2つの言語表現の組合せが意図された解釈を特定化する場合、一方は発話の推論過程を調整する場合である。 さらに、組み合わせの語数は2語が最も多く、3語からなる場合は限定的であり、「第二次談話標識+フィラー+フィラー」、「フィラー+フィラー+フィラー」の例が少数ながら観察された。BNCとWordbanksで共起の頻度が高い例を示すと、but I mean you know (20/33)、but you know I mean (11/21)、But I mean like (16/30)、well I mean you know (6/14)、well you know I mean (10/12)である。また、4語からなる組み合わせは皆無である。 これは組合せ現象が関連性の伝達原則を反映しており、談話標識とフィラーが共起する場合、その順序や共起の数は最適な関連性の見込みに合致しているからだと言えよう。組合せによる認知効果が処理労力により相殺されない場合は、談話標識やフィラーは必ずしも一つの発話で多様に組み合わされることはない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初はBNCとWordbanksからの組み合わせのデータの収集と分析を平成29年と平成30年にやり終える予定であったが、BNCとWordbanksのデータについては整理と分析が平成29年度にほぼ終了し、新たな分析対象とした言語コーパスSanta Barbara Corpus of Spoken American Englishについても、収集と整理を終えることができた。また、平成29年度に談話標識および談話標識とフィラーの組み合わせに関して論文を4本執筆し、学会発表1件を行なっており、途中段階での研究成果の公開も順調に進んでいる。さらに、平成30年度と平成31年度に収集と分析の対象となる言語コーパスはCOCAと映画のスクリプトのみとなり、平成30年度内に両者のコーパスからの組み合わせデータの収集と分析を終えることができると予測され、当初の予定どおり、平成31年度は談話標識とフィラーの組み合わせが符号化する複合的手続き的制約や対人機能の学習リストの作成に費やすことが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究をもとに、今後2年間の研究では以下の課題に取り組む予定である。 (1)平成30年度の研究の推進方策 COCAおよび映画のスクリプトから、第一次・第二次談話標識とフィラーの組合せのデータを収集し、それらを組み合わせのタイプ別に整理し、組み合わせが符号化する複合的手続き的制約を分析する。これまでと同様に、「第一次談話標識+第二次談話標識」「第一次談話標識+フィラー」「第二次談話標識+フィラー」「フィラー+フィラー」の4つのパターンに加えて、3語および4語からなる組み合わせについても分類を行なう。収集に関しては学部生および大学院生に研究補助を依頼する。さらに、11月1日~3日に開催される国際学会(第4回アメリカ語用論国際学会)での口頭発表、および学術論文執筆などにより、途中段階における研究成果を公開する。また、2年目を終えるにあたり、研究計画遂行の確認とシミュレーションを行い、最終年度の研究計画の遂行の実現可能性について検討する。 (2)平成31年度の研究の推進方策 それぞれの組み合わせパターンをもとに、会話における使用状況別に、組み合わせの複合的手続き的制約、対話形成に必要な対人機能などを解説したガイドブックを作成する。研究成果は国内外での学会発表および学術論文執筆などにより公開する。なお、計画どおりに研究が終了しない場合、収集する言語データの種類と数を減らして分析を行なう等の対応をとる予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、本年度研究期間中に当該研究を発展させるために、およそひと月間の海外渡航を行なったことによる。まず、ニューヨーク市立大学大学院センターの訪問研究員として、コーパスに基づく談話分析の手法について研究を行い、談話標識の著名な研究者であるボストン大学の教授のもとで、談話標識とフィラーの組み合わせ現象に関する執筆論文および本年度の国際学会の口頭発表の内容に関して、議論を行いコメントをいただいた。
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Research Products
(6 results)