2019 Fiscal Year Research-status Report
A Cognitive-Pragmatic Study of the Complex Procedures Encoded by the Multiple Occurrence of Discourse Markers and Fillers and Dialogue Construction
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17K02683
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大津 隆広 九州大学, 言語文化研究院, 教授 (90253525)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 談話標識 / フィラー / 関連性理論 / 手続き的制約 / 多重生起 / 複合的手続き |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、COCAなどのコーパスデータの収集と整理を続けながら、英語のおける談話標識とフィラーの多重生起のデータに理論的説明を行った(本研究の結果の一部は2019年6月の16th International Pragmatics Conferenceにて口頭発表)。 コーパスデータの観察から多重生起について次のことが言える。「第一次談話標識+第二次談話標識」「第一次談話標識+フィラー」「フィラー+フィラー」の3パターンの多重生起は一般的であるのに対して、「第二次談話標識+第二次談話標識」「第二次談話標識+フィラー」の多重生起の頻度は極めて低い。さらに、「第二次談話標識+第一次談話標識」「フィラー+第一次談話標識」「フィラー+第二次談話標識」の多重生起の例がコーパスデータとして見られるが、質的検討を加えると2つの間に意味的断絶があると考えられるため、今後のさらなる包括的説明が必要なものの、本研究では多重生起として扱わないこととした。 以上の多重生起のパターンからいくつかの理論的説明が可能である。まず、これらの多重生起の対話における手続き的制約は、談話標識とフィラーのそれぞれの手続き的制約が組み合わされた(combined)ものではなく、コンテクストにおいてそれぞれが認知効果の調整を行うことで複合的な(complex)制約を符号化していると言える。さらに、massive modularity(広範囲のモジュール性)の観点から、第一次談話標識は文脈含意の派生や既存の想定の却下のような生の認知効果、第二次談話標識は高次表意の構築、フィラーは発話態度の調整としての認識的警戒(epistemic vigilance)に関する制約をそれぞれ符号化していると考えられる。談話標識とフィラーの多重生起の順序は語用論的モジュールの階層性と関わりがあるという仮説の検討については次の研究課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COCAにおける談話標識とフィラーの多重生起のデータの収集はほぼ終了したものの、新型コロナウィルスにより研究会や資料収集の中止、研究補助依頼のキャンセルなどによる研究活動の滞りのため、BNC、Wordbanks、映画のスクリプト、COCAの例を対人機能・使用状況別にまとめたガイドブックを全て完成させることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究期間で導かれたデータをもとに、今後の本研究の推進方策を以下のように設定する。 (1)談話標識・フィラーの4つの組み合わせパターンとパターン内での多重生起をもとに、対話において発話者が意図する対人機能について、使用例のガイドブックを完成させる。 (2)massive modularity(広範囲のモジュール性)が示唆する語用論的モジュールの階層性と談話標識とフィラーの生起の順序の関わりについては、本研究課題では追記事項として触れるにどどめる。その包括的な研究は、間投詞などの手続き的表現のデータを加えた多重生起例をさらに集めることで、次の研究課題として取り組みたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で、2月末より現在まで研究会や資料収集を行うことができず、資料整理の研究依頼もキャンセルせざるを得ず、予算の繰越を行なった。本年度に繰り越した予算の使用については、オンラインの言語コーパスの使用、可能になった場合の研究会や資料収集の旅費、対人機能別・使用状況別の談話標識とフィラーの多重生起ガイドブック作成時のホームページ作成費用などに使用する予定である。
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Research Products
(2 results)