2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02697
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
森田 順也 金城学院大学, 文学部, 教授 (20200420)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 形容詞化 / 統語‐形態インタフェース / 分散形態論 / 大規模コーパス / hapax |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、子供による言語の獲得、とりわけ語彙の獲得の説明-子供が短期間に大量の語を獲得できるのはなぜか―を最終目標として、日英語の形容詞化現象に焦点を当てて、そのメカニズムを明らかにするものである。本研究では、「分散形態論」の文法モデルを基盤として、形態統語的現象の中心である形容詞化のプロセスを対象として研究を着実に推進してきた。具体的には、下記1-2の調査によって形容詞化の創造的・普遍的側面を浮き彫りにすることを試みてきた。1.大規模コーパスに見出される日英語の形容詞形hapaxを調査することによって、形容詞化表現の創造的な側面を明らかにする。2.収集された日英語の形容詞化の語形を精査することにより、語形決定の規則性を明らかにする。上記の研究成果を公表するために、学術論文、"Narrow Productivity, Competition, and Blocking in Word Formation"を公表した(2018年5月、Proceedings of the Third International Conference on Computational Linguistics in Bulgaria, pp. 34-40)。本稿の目的は、狭く定義された生産性(narrow productivity)を提案し、これに基づいて英語の接尾辞付加の生産性を算出することにある。調査結果に基づき関連する語彙挿入プロセスを提案することによって、反語彙主義の形態理論である分散形態論モデルの基本概念ー競合(competition)及び阻止(blocking)ーを実証した。また、5th International Conference on Language and Literatureにて、"An Analysis of Self-compounds within an Antilexicalism Framework"という題目で研究発表を行った(2018年6月、University of Cantabria)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、形態的機構の仕組み及び統語的機構との相互関係の解明を目的として、形容詞化表現を規則的に生成するメカニズムを明らかにする。そのために、「派生形容詞及び複合語形容詞はレキシコンに貯蔵されるものとされないものとに区分される」を含む計7つの作業仮説を設置し、計画通りに、以下の各ステップを踏んで仮説の検証を行った。 第一のステップとして、LehnertのReverse Dictionary of Present-Day English及び先行文献や筆者が収集した実例に基づいて、「形容詞的(現在)分詞」「現在分詞形容詞」「両者の複合語」「-ive形容詞及び複合語」「名詞由来の-ed形容詞」及び「N-ful/-ous/-y形容詞」のリストを作成した。 第二に、hapax legomenonの形容詞化表現のリストを作成した。具体的には、ステップ1で作成したリストの各語彙項目をThe British National Corpusで検索し、hapaxの形容詞化表現を選別した。またBYU-BNCコーパスのwild cardの検索機能を使って、上記の検索を補った。 第三にコーパスの検索を行った。ステップ2で作成したリストの各語彙項目をBNCで順次検索し、上記の作業仮説に照らし合わせて必要な形態・統語的情報を、丹念に記録した。最後にデータ解析を行い、作業仮説を検証した。その際に、複数のインフォーマントによる文法性のチェックによってコーパスに基づく検証を適宜補った。 上記の研究成果として、5th International Conference on Language and Literatureにて、"An Analysis of Self-compounds within an Antilexicalism Framework"という題目で研究発表を行った(2018年6月、University of Cantabria)。形容詞化現象であるself複合化に焦点を当て、大規模コーパスから抽出されたself複合語の詳細な分析に基づき、同複合語の統語的、形態的、意味的特性を明示した後で、分散形態論の観点からこれらの特性群を原理的・統一的に説明した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、形態的機構の仕組み及び統語的機構との相互関係の解明を目的として、形容詞化表現を規則的に生成するメカニズムを明らかにすることにある。平成29年度は、「形容詞的受身」「過去分詞形容詞」「両者の複合語」及び「-able形容詞・複合語」について、調査を行った。平成30年度は、「形容詞的現在分詞」「現在分詞形容詞」「両者の複合語」「-ive形容詞及び複合語」「名詞由来の-ed形容詞」及び「N-ful/-ous/-y形容詞」について、調査を行った。平成31年度/令和1年度は、これまでの研究の総括として、以下の研究活動を行う。第一に、大規模コーパスの検索に基づく英語の形容詞化に関する広範な事実観察の結果を、整理・分類する。とりわけ、各種の形容詞化現象の特性群を列挙した後で、各形容詞化現象の共通点を抽出する。第二に、各種の先行研究を再読した後で、上述の事実観察に照らし合わせて、一連の先行研究の問題点を列挙する。第三に、先行研究の問題点を踏まえ、詳細な言語観察による各作業仮説の検証に基づいて、英語の複雑語形成メカニズムに関する経験的・理論的に妥当な原理(言語事実に合致し、しかも一般性の高い原理)を提案する。具体的には、反語彙主義の形態理論である、分散形態理論の観点から関連する語形成システムの規則・原理を提示する。最後に、広範な事実観察及び理論的分析を、学会・研究会・フォーラムで発表し論文にまとめることによって公表する。
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