2017 Fiscal Year Research-status Report
Conditionals and topology; the origins of non-monotonicity
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17K02699
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Research Institution | Nagoya Gakuin University |
Principal Investigator |
今仁 生美 名古屋学院大学, 外国語学部, 教授 (20213233)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田窪 行則 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 名誉教授 (10154957)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非単調性推論 / モダリティ / 位相 / 条件文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、自然言語において非単調性推論がなぜ発生するのか、その理由について考察を進めることを目標としている。特に、発生の理由の一つとして、非単調性推論と数学における位相との関係および非単調性推論とモダリティとの関係に着目する。 平成29年度は8月末から9月上旬にかけて海外研究協力者であるコネチカット大学(アメリカ)の教授であるStefan Kaufmann氏およびMagdalena Kaufmann氏を訪問し、自然言語における推論の性質について議論を行った。自然言語の非単調性推論については坂原茂氏の研究が有名であるが、この議論では坂原氏の主張の一部に不備がある可能性(特にモダリティが含まれる条件文における非単調性推論の成立を説明できない)があることが分かった。 不備の詳細は以下の通りである:A⊃B の場合、B と誰かが発話した場合、¬Aが会話の含意として導かれる。たとえば、「aが100万持っている」なら「aは10万持っている」は数学的真である。この場合誰かが「10万持っている」なら、100万持っていない。これに対する坂原の主張は以下である:(¬p∧q) ⊃(¬p∨q)(恒真)=(¬p∧q) ⊃ (p⊃q)。例;「pならばq」と誰かが言うと、¬(¬p∧q)が会話の含意として導かれる。この¬(¬p∧q)は、¬p⊃¬q と同値である。 この坂原に対する反例は以下である;¬(¬p ⊃◇q) ⊃ (p⊃q)。この式は恒真式である。つまり、¬(¬p ⊃◇q)が真なら、p⊃q =¬p∨q も必ず真。((¬p∧¬◇q)が真なら、¬pは真であるはずだから。)この場合、「花子が来れば、太郎が来る」と誰かが言った場合、「花子が来なければ、太郎が来るかもしれない」が誘導推論として導かれてもいいはずである。しかし、少なくとも日本語では「花子が来なければ、太郎が来るかもしれない」は導出されない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究課題が多少遅れているが、これはまだ研究課題の成果が論文や発表の形に至っていないという意味である。初年度は問題点の確認や明確化を進めたが、理論化に向けての十分な精緻化するには時間が足りなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題は変更なしで続ける予定である。2年目は海外協力者のStefan Kaufmann氏とMagdalena Kaufmann氏が来日するので、位相を研究している宝島氏を加え、非単調性推論の特に数学的な側面について議論を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2017年度に行う予定であった研究会が開けなかったため、2018年度に持ち越すことになった。また、今年度は海外研究協力者を招聘するので予算の余裕がない。共同研究者への分担金も極めて少ないものとなっている。 そのため、海外研究協力者との会合に参加するための旅費として昨年度の残額分を用いる予定である。
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