2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02707
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
藤本 雅子 早稲田大学, 人間科学学術院, その他(招聘研究員) (30392541)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 喜久雄 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (20173693)
船津 誠也 県立広島大学, 公私立大学の部局等(広島キャンパス), 准教授 (30275383)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 促音 / 重子音 / 調音 / MRI / Airflow / 南琉球方言 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は南琉球池間方言と標準語の促音につき研究を進めた。南琉球池間方言の音響分析では,1) 標準語同様,促音は非促音より持続時間が長いこと,2) 有声促音は,標準語とは異なり,子音区間が継続して有声であり,語頭の促音では長いpre-voicingがあること,3) VOTは促音が非促音より短いこと,4) 促音に後続する母音は非促音に後続する母音に比べフォルマント構造が明確であること,5) 有声摩擦音の促音は破擦音として実現されることなどの特徴が明らかになった。3)は語頭の無声破裂音の促音と非促音,4)は語頭の無声摩擦音の促音と非促音の弁別に寄与すると考えられる。 MRIの分析によりa) 有声促音では咽頭が拡大すること,b) (C)CV区間の舌の遷移は促音後が早く,かつアンダーシュートしにくい傾向があること,c) 有声摩擦音の語頭の促音では子音区間に先立って調音閉鎖があることが明らかになった。a)は2)に,b)は3),4)に,c)は5)にそれぞれ寄与する調音調節であることが示唆された。 標準語の音響分析では,有声促音が半無声化していることが確認された。これは先行研究の結果と一致する。同じ話者のAirflowの分析により,非促音は有声と無声でoral flowが大きく異なるのに対し,促音は有声と無声のoral flowが類似したパタンを示すことが明らかになった。標準語の有声促音は無声化する傾向がある事が知られているが,それがoral flowという調音特徴に由来する可能性が示唆された。 上記の結果は2つの国際学会と,proceedingsや英文誌にて発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は南琉球池間方言と標準語の促音につき研究を進めた。南琉球池間方言の音響分析では,主に有声促音と語頭促音の特徴が明らかになり,有声促音は,標準語とは異なり,子音区間の有声が継続することが示された。またMRIの分析により有声促音では咽頭が拡大することが明らかになり,咽頭の拡大が有声を保つ調音調節であることが示唆された。 標準語の音響分析により,有声促音が半無声化していることが確認された。これは先行研究結果と一致する。また同じ話者のAirflowの分析により,非促音は有声と無声でoral flowが大きく異なるが,促音は有声と無声のoral flowが類似したパタンを示すことが明らかになった。標準語では有声促音は無声化する事が知られているが,それがoral flowという調音特徴にも現れていることが示された。 上記の結果は2つの国際学会で発表し,英文誌にも採択されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き南琉球池間方言と標準語の促音,および他の方言の音響,調音特徴についても検討する。南琉球池間方言では特徴的な半無声の鼻音の促音を含め,より詳細な分析を行う。MRIによる調音分析も並行して行い,音響特徴がどのような調音によりもたらされるかにつき検討する。南琉球池間方言の音韻的多様性を可能にしている調音特徴の特定につなげたいと考えている。 また,和語の有声促音を持つ方言である熊本方言と柳川方言の分析も行う。熊本方言についてはMRIの分析も進めている。 さらに,EMAによる調音分析や喉頭画像,PGG(Photo-electric glottogram)による発声の検討している。
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Causes of Carryover |
昨年夏に南琉球宮古島方言の録音を海外在住の共同研究者とともに行う予定であったが,共同研究者の来日がかなわなかったため,その旅費とデータ採取,分析補助にかかわる費用が使えず次年度使用金が発生した。本年夏に共同研究者が来日の予定であるため,本年度の助成金と合算して旅費とデータ採取,分析補助の謝金等に用いる予定である。 それ以外は昨年度に引き続きMRIの分析,EMA実験の分析とハイスピード喉頭画像の分析を行い,6月にリスボンで開催されるLabPhonや,9月に那覇で開催される音声学会全国大会等で発表を行う。また来年度メルボルンで開催されるICPhSへのabstractの投稿を行う。
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