2018 Fiscal Year Research-status Report
ハンガリー語の周辺方言における結合の複数に関する調査研究
Project/Area Number |
17K02716
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
大島 一 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変異研究領域, プロジェクトPDフェロー (10538036)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ハンガリー語 / 結合の複数 / 複数所有 / ハンガリー語方言 / ブルゲンラント / オーストリア / 言語接触 / ドイツ語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,ハンガリー語の結合の複数(例,Pe'ter-e'k「ペーテル-たち(=ペーテルとその仲間たち)」。なお,ハンガリー語の表記では表示の問題から,「e'」はeの直上にアクセント記号があることを示す)について,ブルゲンラント州(オーストリア)のハンガリー語方言における結合の複数に注目し,それを記述することである。その理由として,標準ハンガリー語において結合の複数は一般に「人」にしか付加できないが,この方言では非人間の名詞にも付加できるという特異的な例外が見られるからである。この現象について詳細な記述を現地調査により達成するとともに,他周辺方言(スロヴァキアのハンガリー語方言)もあわせ,さらに標準ハンガリー語ではコーパスからの調査結果をもとに結合の複数の意味機能を再検討し,ハンガリー語の結合の複数の,標準ハ ンガリー語を越えたレベルにおける,その意味機能のより精緻な記述を目的とする。 2年目の平成30年度は,ひきつづき,オーストリア・ブルゲンラント州のオーバーヴァルト(Oberwart)を中心として,9月に,約10日間の現地調査を実施した。また,ブラチスラヴァ大学(スロヴァキア)のハンガリー語科で資料収集および現地研究者との打ち合わせを行った。初年度に得たデータもあわせ,平成30年度9月にブダペスト大学(ハンガリー)で開催された社会言語学に関する国際学会(The 2nd International Conference on Sociolinguistics, ICS2)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現地調査については,昨年度は,オーストリア・ブルゲンラントにおけるもうひとつのハンガリー人コミュニティがあるオーバープッレンドルフ(Oberpullendorf)での調査が行えなかったことと,スロヴァキアにおけるハンガリー語方言の調査の実施も詳細に行えなかったことが挙げられる。 そして,標準ハンガリー語における結合の複数のコーパス調査も,当初は昨年度中に結果のとりまとめに入りたかったところだが,現在においてもその整理と分析が進行中という状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である今年,令和元年度も現地調査に赴く。特に,スロヴァキアのブラチスラヴァ大学現地研究者に協力を仰ぎ,ハンガリー人コミュニティの現地調査を実施したい。この調査結果をまとめて,今年度後半に国内外の研究学会で成果を発表する。 また,標準ハンガリー語における結合の複数のコーパス調査のとりまとめ,分析もあわせて行い,上記のハンガリー周辺地域での結合の複数の用法とあわせ,実態のとりまとめを行う。
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Causes of Carryover |
平成30年度において予定していた調査地の一つである,中部ブルゲンラントのオーバープッレンドルフでの調査が実行できなかったために生じた状況である。こちらは最終年度である今年の旅費に加えて消化するものとする。
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