2019 Fiscal Year Annual Research Report
Research on associative plural of Hungarian dialects in neighboring Hungary
Project/Area Number |
17K02716
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
大島 一 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変異研究領域, プロジェクト非常勤研究員 (10538036)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 言語学 / ハンガリー語学 / 複数性 / 方言研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,オーストリア・ブルゲンラント州におけるハンガリー語話者のハンガリー語方言について,当州における最大のハンガリー人コミュニティがあるOberwartおよびその周辺集落にて,特に固有名詞以外のヒト名詞やヒト以外の名詞につく結合の複数が,どのような意味を持つかに焦点をあて調査を行ったところ,単数所有形とした上で結合の複数(日本語でいう「たち」)が付くことで,複数所有の意味を表すことがわ分かった(「私の子ども-たち(=私の子どもが複数)」,「私の犬-たち(=私の犬が複数)」など)。これは「私の子ども-たち」「私の犬-たち」となることで,私の子ども(単数)とその近親者といった結合の複数の読みも考えられそうだが,調査の結果,その解釈はないことが判明した。 また,同じブルゲンラント州中部に位置するもう一つのハンガリー人コミュニティがあるOberpullendorfでも同内容の予備的調査を行った。興味深いことに,当地のハンガリー語話者には上記のような複数所有の特別な形式は持たない。単数所有形に通常の複数を付加したり,標準ハンガリー語の複数所有を用いたりと,話者によって様々であることが特徴的である。 さらに,周辺方言として,隣国スロヴァキアにおけるハンガリー語方言調査として,ハンガリー系住民が多く居住する Dunajska' Streda出身のハンガリー語話者にインタビューを行ったところ,こちらも同様の形式で複数所有を言うことはないとの返答を得た(すなわち,標準ハンガリー語の複数所有を用いる)。 当研究では,標準ハンガリー語の複数所有形式が,オーストリア・ブルゲンラントではドイツ語の影響か,「名詞+単数所有+結合の複数」という特別な形式で実現すること,しかし,同州の他のハンガリー語方言および隣国スロヴァキアにおいては,その形式はまず用いられないといった調査結果を得た。
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