2018 Fiscal Year Research-status Report
現代日本語に観察される書体の多様性に関する社会言語学的,音声学的研究
Project/Area Number |
17K02718
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
岡田 祥平 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (20452401)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 書体 / 音声 / パラ言語情報 / 非言語情報 / フォント / ステレオタイプ / 役割語 / 発話者のキャラクタ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の2年目となる本年度は,発話音声を忠実に文字化したテレビ番組の字幕(以下,「テレビの字幕」と表記)を利用し,なぜ現代日本語の書記言語には多様な書体,フォントが観察されるのか,その理由について,発話音声の音響的特徴に加え,発話者が持つ(番組進行上,発話者に与えられた)「キャラクタ」も考慮に入れつつ考察を行った。その結果,現代日本語の書記言語に観察される書体(フォント)の多様性の背景の一要因として,書体には以下のような役割・機能があるのではないかという結論に達した。 1 語用論的な効果を伝える役割・機能 2 パラ言語情報と非言語情報を伝える役割・機能 1の役割・機能は,談話展開上,強調を施したい要素について,前後の要素とは異なる書体で表すものであり,音声言語が付随するテレビの字幕のみならず,音声言語が付随しない一般的な書記言語にも観察されるものである。一方,2の役割・機能は,前後とは異なる音響的特徴で発話された要素について,前後の要素とは異なる書体で表すものであり,音声言語が付随するテレビの字幕特有のものであるといえる(ここに,音声言語と書記言語とのインターフェイスを見出すことができる)。さらに,2の役割・機能は,有標的な音響的特徴を持つ発話に加え,(きわめて)特徴的な「キャラクタ」を有している発話者の発言を文字化したテレビの字幕に認めることができた。以上の事実は,現代日本語の書記言語に観察される書体の多様性の背景を考える際には,音声言語と書記言語とのインターフェイスの側面や,さらには発話者が持つ/に与えられた「キャラクタ」の問題を踏まえる必要があるということを意味している。 なお,テレビの字幕は聴覚障害者や聾者がテレビを視聴する際には重要な役割を果たしていると考えられる。字数の都合上詳述できないが,本年度はそのような観点も意識した研究を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
諸事情により,今年度も適当な研究協力・補助者(分析対象データの整理作業の補助の担当者)を見つけることが叶わなかった。そのため,本格的に分析対象データの整理作業を行うことができなかった。。
|
Strategy for Future Research Activity |
早急に研究協力・補助者候補者を見出し,研究補助作業に関する養成を行い,当初の研究計画を着実に実行していく体制を構築する。
|
Causes of Carryover |
諸事情により,研究補助をお願いする研究協力・補助者の協力を得ることができなかった。来年度は,本研究の遂行に必要な技術を持った研究協力・補助者を養成し,当初の研究計画を着実に実行していく体制を作り,適正な予算執行を行う。
|
Research Products
(8 results)