2020 Fiscal Year Annual Research Report
Contrastive studies on the expression of the DO-type and the BECOME-type among Luxembourgish and other European languages
Project/Area Number |
17K02723
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
田村 建一 愛知教育大学, 教育学部, 特別教授 (90179896)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 表現類型 / する型 / なる型 / ルクセンブルク語 / 知覚構文 / 無生物主語他動構文 |
Outline of Annual Research Achievements |
言語表現の類型として、西欧諸語を中心に多く用いられる知覚構文や無生物主語他動構文などの「する」型と、日本語のようにそうした構文を取らずに事態を示す「なる」型の区別が提唱されているが、本研究では、同じ西欧諸語の間でも「する」型表現の使用頻度に大きな違いが見られ、特にルクセンブルク語に「する」型表現が回避される傾向が見られることから、ルクセンブルク語と他の西欧諸語、さらにはロシア語も含めて表現類型の対照研究を行った。研究手法としては、主として有名な児童文学作品の翻訳版をデータとして用いて、原文の「する」型表現の訳し方を分析した。分析した言語は、ルクセンブルク語、ドイツ語、英語、オランダ語、フランス語、ポルトガル語、ロシア語、スウェーデン語である。 研究期間の前半には、知覚構文に焦点を当てていたが、後半は無生物主語他動構文に重点を移し、最終年度(2020年10月)に刊行した論文では、『星の王子さま』『不思議の国のアリス』および『長くつ下のピッピ』の翻訳版の対照研究を通して以下のことを明らかにした。総じて英語やフランス語、ポルトガル語は「する」型表現を多用するのに対して、ルクセンブルク語とロシア語はそれを回避する傾向が強い。また、翻訳において無生物主語他動構文が回避される傾向が強い表現内容としては、モノ・コトが人に対してネガティブな作用を及ぼすものが多く、ルクセンブルク語にも少なくとも二作品においてはその傾向が当てはまる。ただし、この表現内容と構文との関連性に関してはさらなる分析が必要である。 本研究は、日英対照言語学で提唱された表現類型をヨーロッパ諸語の分析に応用したものであり、また公刊した論文三本のうちの二本をドイツ語で執筆しており、日本人ならではの視点による研究を海外に発信したと考える。
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