2017 Fiscal Year Research-status Report
イラン語史及び中央アジア出土胡語文献研究の観点からのトゥムシュク語の総合的研究
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17K02724
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
荻原 裕敏 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (60762135)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | トゥムシュク語 / 中世イラン語 / 歴史言語学 / 古文書学 / 中央アジア史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国・新疆ウイグル自治区のトゥムシュク地域を中心に、その東のクチャからトゥルファンに至る地域で資料が発見され、現在世界各国に所蔵される、中世イラン語に属するトゥムシュク語で書かれた文献を研究対象として、文献学的校訂作業を行い、その成果を利用して当該地域の言語・歴史・宗教・文化を再構成するとともに、トゥムシュク語の言語構造を解明し、歴史言語学の観点から記述する事を目的としている。最終的には、トゥムシュク語文法の記述的・歴史言語学的研究並びにドイツ所蔵トゥムシュク語世俗文書集成の校訂出版を目指している。 本年度に予定していた計画は、トゥムシュク語文書調査及び他言語資料との比較研究の二つであった。この内、文書調査については、中国所蔵文書の調査を行った。一方、他言語資料との比較研究の面では、トゥムシュク語世俗文書の再検討を行うことで、従来誤って解読されていた読みを修正することができたため、新たに他言語資料との比較を可能にする資料を追加することができた。この修正により、トゥムシュク語世俗文書に含まれる、いくつかの語義不明の語に対して、他言語資料との比較を行うことで、新たな解釈を提出することができた。この研究成果は、トゥムシュク語世俗文書を中央アジアの諸言語で書かれた世俗文書中に位置づける手ががりを提供するとともに、イラン語史の観点からのトゥムシュク語研究にも貢献する。なお、この研究成果は英語によって論文化し、ヨーロッパの学術雑誌に投稿済である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度に予定していた計画は、トゥムシュク語文書調査及び他言語資料との比較研究の二つであった。この内、文書調査については、中国所蔵文書の調査を行うことができたが、発見場所とされる図木舒克市の遺跡や周辺にある関連遺跡の実地調査は、諸般の事情により、行うことができなかった。また、イギリス及びフランス所蔵文書の調査も、研究論文の執筆や関連資料の調査に時間を取られたため、断念した。 一方、他言語資料との比較研究については、従来誤って解釈されてきた資料の修正を行うことができただけでなく、この修正により、これまで語義が不明であったいくつかの語に対して、イラン語史の観点からの解釈を与えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究情況によって断念した調査の内、フランス所蔵文書の調査を優先的に行い、研究成果の論文化に向けた準備を開始するとともに、イギリス所蔵文書についても調査を行う。 また、トゥムシュク語文法の記述的研究を進め、動詞体系の解明を行い、成果を英文論文としてまとめるが、言語学的にトゥムシュク語と最も近い関係にあるコータン語の動詞体系の研究については近年大きな進展が見られるため、これら最新の研究成果を取り込んだ上で、トゥムシュク語動詞体系の解明を進める。
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Research Products
(4 results)