2018 Fiscal Year Research-status Report
江戸・明治期日朝往復ハングル書簡類データベースの構築
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17K02725
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岸田 文隆 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (30251870)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 対馬宗家文書 / ハングル書簡 / 小田幾五郎 / 朝鮮語通詞 / 倭学訳官 / 浦瀬裕 / かな表記朝鮮語 / 束田多四郎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、江戸中期から明治初期にかけて分布している日朝往復ハングル書簡類を網羅的に収集し、翻刻・和訳・文献言語学的考察を付したデータベースを構築する。日朝往復ハングル書簡類は、従来公開がなされていなかったため、また、各地に断片的に伝わっていたため等の理由により、その全貌を把握することが困難であったが、近年の資料公開の機運に乗じ、網羅的な調査・分析を企図するものである。このデータベースは、朝鮮語史のみならず、日朝関係史などの研究にも有用な情報を提供するものと考えられるが、データベース構築の暁には広く研究者一般が利用できるように、ウェブにオープンアクセス形式で公開する計画である。 今年度は、未入手資料の調査・収集につとめ、岡山県立記録資料館に所蔵される花房端連・義質関係資料中に浦瀬裕のハングル書簡[請求番号: A00005-000440]があることを発見した。また、今までに調査・収集した日朝往復ハングル書簡類の一覧表を作成し、それらが18世紀中葉以降に分布していることを確認したうえで、そのような現象が生じた背景には、朝鮮司訳院の倭学訳官らの日本語能力の喪失と、日本側の朝鮮語通詞等のハングル能力の獲得と漢文能力の欠如という要因があったとの推測をおこなった(岸田文隆: 2018)。さらに、8年前より実施してきた対馬歴史民俗資料館所蔵対馬宗家文書ハングル書簡類についての共同研究の成果を集大成し、写真・翻刻・和訳・解説付きの研究書を刊行した(松原孝俊・岸田文隆編: 2018)。また、富山市立図書館の山田孝雄旧蔵書の中に「朝鮮口聞書」というかな表記朝鮮語の資料があるのを発見し、収集・翻刻作業を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究における調査対象の資料の大半を所蔵している対馬歴史民俗資料館が目下建て替えのため閲覧業務を中止しているため。今年度は、やむを得ず、他所に所蔵されている資料の収集や既収集資料の分析調査を優先しておこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、未入手資料の収集、翻刻、和訳、文献学的検討をおこなう。 未入手資料の収集: 「分類紀事大綱」「朝鮮通信使記録」等を中心とした歴史記録類や明治期の資料などのうち、今年度に収集しえなかったものについて、現地調査をおこない、未入手資料の収集につとめる。 翻刻: 上記の資料のうち、収集できたものを順次翻刻・入力する。 和訳: 前年度に和訳作業ができなかった資料につき、和訳を作成する。また、和解が存在する場合には、その翻刻も実施する。 文献学的検討: 収集した書簡類を関連する歴史記録類と照合し、発信者・受信者の同定、発信年代の比定等、文献学的検討を加える。 2019年度前半も対馬歴史民俗資料館は建て替えのため閲覧業務を中止しているので、韓国国史編纂委員会など他所に所蔵されている資料の収集と調査を優先しておこなう。対馬歴史民俗資料館の閲覧業務は2019年度後半に再開される予定なので、該所の資料調査はそれ以降に実施する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:対馬歴史民俗資料館が建て替え工事のため閲覧業務を中止しているので、当初予定していた調査旅行を他の地域の所蔵機関にふりかえて実施した結果、差額残額が生じた。 使用計画:この次年度使用額および次年度分として請求した額を合わせ、対馬歴史民俗資料館・韓国国史編纂委員会・国会図書館・東京大学への調査旅行費用として使用する計画である。
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Research Products
(4 results)