2022 Fiscal Year Annual Research Report
Social and linguistic factors constraining grammatical variability in Hawaii Creole
Project/Area Number |
17K02736
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Research Institution | Aichi University of the Arts |
Principal Investigator |
井上 彩 愛知県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (90634915)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | クレオール / ハワイ・クレオール / 言語変異 / 言語変化 / 文法的変異 / 補文標識 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度には、補文標識の変異についての分析をまとめた論文が、修正を経てドイツの出版社Lincomの英語学研究のシリーズStudies in English Linguisticsの24巻となる書籍World Englishes and Creole Languages Today Vol. 1: The Schneiderian Thinking and Beyondの一部として出版された。 研究論文The use of fo complementation in current Hawai‘i Creoleでは、世代の異なる作者によってHCで書かれた文学作品に現れる補文標識の使用を量的に分析した。HCの補文標識は、コピュラ動詞や過去時制標識などの他の文法的な特徴とは異なり、同一の話者が異なる標識を使用することはほぼなかった。 しかし、例外的に変異が観察された事例を詳細に分析すると、より若い世代の作者の使用例には義務・願望表現が過去時制で使われる時にのみ例外的に変異が見られるということがわかった。この例外的使用は一見、より若い世代の作者がこれまでのHC文法ではクレオール標識foが使われてこなかった環境でもクレオール標識を使うようになっているかのように見える。しかし実際には過去の義務を表すクレオールモーダルの haedtuを使う代わりにこれを再分析(reanalysis)して、さらにtuの部分をfoと置き換えていると分析できることから、クレオール標識を標準英語のtoと同機能のものであるとみなして本来のfoの用法よりも拡張的に使用した現象であるとみられる。この現象は隠れた脱クレオール化(Covert Decreolization)の一種である言語変化が現在進行中であることを反映しているという可能性が指摘された。
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