2018 Fiscal Year Research-status Report
第一言語獲得実験による文法の抽象的レベルの探求―表層の語順と階層を超えて
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17K02738
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
木口 寛久 宮城学院女子大学, 一般教育部, 准教授 (40367454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
船越 健志 獨協大学, 外国語学部, 専任講師 (40750188)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 第一言語獲得 |
Outline of Annual Research Achievements |
生成文法では、可視的な表層の階層構造だけでなく抽象的レベルでの階層構造(Logical Form: LF)の存在が想定されているが、第一言語獲得実験でLFが求められる統語作用が生得的であると明示した研究は世界的にも希少である。そこで、本研究課題では ― (i) LFのような抽象的な文法レベルが関与する統語現象、操作について理論的研究調査を行う。(ii) そこで得られた知見をパラダイム化し第一言語獲得実験に適用する。(iii) 幼児の文法にもLFのような抽象的な文法レベルが存在することを示す確固たる実証データを収集する。― 以上を方針とし、表層構造のみならずLFでの階層構造を想定する生成文法による言語獲得論の正当性を明示し、幼児の文法においてもLFの存在を前提とする、より洗練された言語獲得モデルの提案を行うことを目的とする。 とくに平成30年度は分裂文(いわゆる強調構文)の再構築現象に関する研究成果をまとめた論文がアメリカ言語学会学会誌であるLanguage誌に原著論文として掲載された。この研究は幼児の文法にも抽象的レベルでの階層構造(Logical Form: LF)の存在が必要であることを強く示唆する研究であり、その貢献が認められての掲載となったと言えよう。 また、これまでの研究による知見を活かし、世界最高峰といわれる英文法書である"The Cambridge Grammar of English Language"(Heddleston & Pullum 2002)の4章と8章を束ねた和訳書「英文法大事典シリーズ」第2巻『補部となる節、付加部となる節』開拓社の責任訳者(研究代表者・木口)および共訳(研究分担者・船越)を担当、今年度内に出版することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題で設定された具体的な研究トピックのうち、①Cleftでの再構築現象の理論的・実証的研究に関しては、論文掲載として成果が結実したが、②二重目的語構文の主語、直接目的語、間接目的語間の数量詞の解釈についての実験が当初想定していた結果とはやや違うものとなり、実験の分析および、今後の研究の進め方について海外研究協力者と打ち合わせを継続することとなった。その間、海外研究協力者のやんごとなき事情もあり、作業に滞りが生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進めている二重目的語構文の主語、直接目的語、間接目的語間の数量詞の解釈についての実験の分析および、今後の研究の進め方について海外研究協力者と打ち合わせを継続する。現在の実験結果を以って分析を行い成果発表につなげていくか、それとも追実験の追加の必要があるかどうかを議論し、後者であれば、実験パラダイムの設定から実験遂行へすみやかに移行したい。
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Causes of Carryover |
海外研究協力者との研究打ち合わせのための海外出張旅費(オーストラリア・シドニー)が想定よりやや安く済んだため、次年度使用額が生じた。今年度の海外での研究成果発表の旅費に充当することを計画している。
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